花さそう12

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「あのさ、ここはとにかく健全な、合宿なんだよ。変なことなんかあるわけがない」
 断言した良太だが、これまでの佐々木に言い寄った面倒な男たちのことを考えると、沢村が心配するのも無理はないかとも思う。
 まあ、その一人は無害なスラッガーだったからいいようなものの、沢村としては知らないやつと同室の佐々木のことが心配で仕方がないのだろう。
「それにさ、加藤さんって、どっちかって言うと研二さんタイプの人で、すげえクールだから、感情に流されてとかってないから」
「信用していいんだな?」
「当たり前だ。工藤さんも信用して猫の手に何かと依頼したりしてるし」
 良太はまっすぐに沢村の目を見上げた。
「よし、わかった」
 沢村も今度は頷いた。
「お前さ、こういう場所で、佐々木さんべったりってのはやめろよな」
 良太は一言念を押した。
「わぁかってる」
 と言いつつ沢村は佐々木の元へ歩み寄る。
「ったくあいつ!」
 良太はブツブツ呟きながら今度はチゲ鍋へと向かう。
「あ、良太さん、お疲れ様です」
 ほろ酔い加減で良太に声を掛けたのは牧だった。
「お疲れ様です。食べてます?」
「はい、十二分にいただいてます。ほんと、こんないたれりつくせりで申し訳ないくらいです。それに……」
「それに? どうかした?」
「……いや、セレブとか、大御所俳優さんとかいるし、沢村選手も! なんか、すごいっすね」
 牧は人の好さげな笑顔を向ける。
「うん、まあ、ここではプライベートだから、普通に話しかけてみれば? ああ、沢村は、いっつも不機嫌だから、気にしないで」
「はあ……」
 良太があちこちの鍋のテーブルを回って食べまくっている間も、京助は具材が足りないところに補ったり、出し汁を足したりと動き回っている。
「京助さん、俺やりましょうか? ご自分も食べないと」
 宇都宮がそんな京助をみて申し出た。
「ああ、気にしないでください。ただの性分なんで。一通り足したら食いますから」
 そろそろ酒も進んで、あちこちでできあがりつつある者がいた。
 その時、千雪が愛犬シルビーの散歩から戻ってくると、続いて藤堂も、今回連れてきた愛犬アイちゃんを連れて階段を上がって行く。
「藤堂さん、犬飼ってたんだ?」
 良太が傍にいた悠に聞くと、「ああ、一人置いとくの可哀そうだろ」と相変わらずぶっきらぼうな返事をする。
 苦笑いを浮かべた良太は、何かがトトトっと近づいてくる気配に振り返った。
 見るとシルビーが良太を見上げて尻尾を振っている。
「お、シルビ、久しぶりだな」
 何かくれと言う顔でじっと良太を見つめているが、「いや、これは人間の食べ物だからなあ」と良太は自分の手にある皿に目を移す。
「良太、また、犬に好かれてやんの!」
 そんなシルビと良太を見た小笠原が声を上げた。

 


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