花さそう13

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「こいつ、犬が寄ってくるんだぜ? いつだったか、犬と一緒のCM撮りでさ、どうも犬がご機嫌斜めで撮影がストップしてたのが、良太が来たらえらく懐いて、俄然、撮影も調子よく進んでさ」
 小笠原が笑いを浮かべながらしゃべる。
「そう言えば、イタリアでも加絵の犬や猫にやたら懐かれてたよね、良太」
 ついでに隣のテーブルにいたアスカが良太の思い出したくない女性の名前を口にする。
「それって良太さんが純粋だからだよ。犬も猫もこの人は大丈夫って思うんだよ」
 隣にいた美亜がそう言って微笑んだ。
「はあ、犬や猫には昔から好かれるんですけどね~」
 ここはもう笑うしかないだろう。
「ようはガキだからだろ?」
「うっさいぞ、沢村!」
 茶々を入れる沢村を良太はキッと睨み付ける。
「こんなとこにおったんかいな、行くで、シルビ」
 千雪がシルビを呼んだ。
「あ、そうだ!」
 良太はもう一つ懸念材料を思い出し、持っていた器と箸をテーブルに置いて、千雪を追った。
「千雪さん、部屋戻るんですか?」
「うん」
「千雪さんに前に話した例のものお願いしたくて」
 良太は千雪と並んで階段を上がる。
「例のもの? あああ」
 千雪も思い出したようだ。
「千雪さんに渡そう渡そうって思いつつ、いつも忘れるから、持って来たんです。忘れないうちに渡しちゃっていいですか?」
 階段を上がりきったところで、良太が吹き抜けになっているリビングを見下ろすと、工藤は秋山と何やら話し込んでいるのが見えた。
「今部屋の方に持って行きますから」
 良太は千雪にそう言うと、自分の部屋に向かう。
 京助の知り合いに鑑定家がいるから、良太が工藤の祖母多佳子から預かったロケットペンダントを鑑定してやろうかと以前千雪に言われていたが、なかなか渡せずにいたのだ。
 そのペンダントにはルビーではないかと思われる赤い石がついている。
 かつて工藤の曽祖父が工藤の祖母に当たる娘の多佳子に渡したヨーロッパ土産だという。
 先だって工藤が話したところによると、曽祖父は何ごともホンモノ嗜好で、軽井沢にある工藤家の別荘では、壁に飾られた絵から平造がいつも花を活けるツボに至るまでおそらくホンモノだろうという。
 アスカの言うところによると、ヨーロッパブランドの名器を普段使いの食器として使っている、らしい。
 であれば多佳子がもらったというペンダントの赤い石が本物のルビーである可能性は高い。
 アンティークな装飾が施されたそのペンダントの石は大豆程もの大きさがある。
 よりによってそんなものを何故多佳子は良太になど渡したのか。
 おまけに工藤にそれを渡そうとしても、お前がもらったんだろう、俺には関係ないものだの一点張りで、受け取ろうとしない。

 


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