そこへ一人遅れてやってきたのは佐々木だ。
「あ、佐々木さん、こっちいらっしゃいよ」
理香ににっこり笑みを返す佐々木だが、沢村はソファを立って佐々木をカウンターに連れて行く。
「あらら、佐々木さんさらわれちゃったわ」
肩を竦めながら理香が速水を意味ありげに見た。
「何飲む?」
沢村はカウンターの中から佐々木に聞いた。
「そやな、ウオッカのソーダ割」
沢村はグラスを二つ用意してウオッカソーダを作ると、カウンターに置いた。
スツールに座った佐々木は、一杯だけ付き合うわ、という。
「何だよ、まだ一時になったばっかだぞ」
「明日、朝飯作らなあかんし」
コクリと佐々木はグラスを傾ける。
「んなモン、他の連中に任せとけよ」
「フレンチトースト、食うんやなかったか?」
すると沢村はムッとした顔になる。
「大体、朝から俺は疲れとんのやからな、お前のお陰で」
佐々木は小声で文句を言って沢村を睨む。
ここに来るのが少し遅れたのは、昨夜沢村の部屋で過ごしたのだが、朝方沢村がぐずぐずと佐々木を離さなかったせいだ。
このスキー合宿を終える頃、沢村のオフも終わるので、佐々木から離れたくない沢村の駄々こねだ。
「お前は幼稚園児か」
佐々木に罵倒されながらも、沢村は佐々木を離そうとせず、結局遅いブランチを食べた後、グズグズしていたら夕方になってしまった、というわけだ。
温泉付きスキー合宿は佐々木も楽しみにしていたし、沢村も佐々木と一緒にいたいのでこうしてやってきたのだが、どこかで佐々木を拉致って自分の別荘で過ごそうと画策していた。
だが今からそれを佐々木に話してしまうと、絶対NOと言うに決まっているので、自分の頭の中だけに留めている。
昨年の合宿では、いきなりみんなの前でキスを仕掛けてきた沢村に佐々木は怒り心頭で、今年は去年とは違うメンバーもいるわけだから、誰彼かまわず自分たちのことをひけらかすような真似はするなと、佐々木に釘を刺されている。
それに、工藤の別荘の作品を見たいという佐々木に付き合わないわけにはいかない。
「明日、午前中スキーやって、午後、工藤さんとこに行ってみるか?」
沢村は言った。
「俺らはええけど、他にも見たい人おるやろ。明日、みんなと時間決めていった方がええ」
「まあ、そうだな」
本当は佐々木と二人がいいと思いつつ、沢村もそれには頷くしかない。
「一応、さっき工藤さんに聞いたら、夕方から平造さんの誕生日の食事会だから、それ前ならいいってよ? 工藤さんがいなくても平造さんが案内してくれるみたいだ」
「そうか。まあ、とにかく、明日の朝、みんなに聞いてみなあかんな」
言葉通り一杯グラスを空けた佐々木と沢村が部屋に戻るというと、長くソファを陣取って酒盛りしていた面々もそろそろ引き上げるかと立ち上がった。
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