「いい加減部屋に戻ったらどうです? 風邪引きますよ」
秋山が何度目かのアスカへの苦言を口にした。
「だって、セシル寝てるからこそっとしないとダメみたいじゃない?」
「恵美さんも久々スキーやって、かなり堪えたらしくて、寝ちゃってるみたい」
直子もアスカに同調するように言った。
「ねえ、目覚ましかけて大丈夫? セシルびっくりしない?」
「あたしの目覚ましが鳴る頃にはもうセシルは朝ごはん食べてると思うから大丈夫よ」
直子が工藤いわく、けたたたましい目覚ましの曲のことを心配して聞くと、アスカは頷いてグラスのウオッカソーダを飲み干した。
「そっか、あたしは恵美さんに確認したら、全然平気だって言ってたから」
「じゃ、そろそろ部屋に戻ろっと」
アスカがスツールを降りる。
「待って、あたしも行く」
直子はアスカのグラスと一緒に自分のグラスを持ってカウンターの中の食洗機にいれた。
「じゃ、皆さんおやすみなさい」
二人が階段を上がって行くと、秋山はやれやれといった顔で、ソファに戻った。
「いや、あのシーンは小笠原くんが言い出したんですよ」
「小笠原が? フン、少しはわかるようになってきたのか、あいつも」
向かい合った宇都宮と工藤は案の定、仕事の話になっている。
理香、彩佳と速水は、沢村が父親や兄と縁を切ったというような深刻な話を笑いながら軽く話していた。
そこへ最後に風呂を使った面々がやってきた。
加藤、辻、研二の三人は入れ替わるように立ち上がった。
「そういや、三田村は?」
「あいつスキーで疲労困憊で、とっくに寝とるわ」
辻が見回すと、研二が答えた。
「ハハ、明日動けへんちゃう?」
「せやな」
三人にすれ違いざま、「お疲れ様、おやすみなさい」と声を掛けた良太は、宇都宮と工藤が何やら熱心に話し込んでいるのに気づいた。
「お疲れ様です」
京助のあとからソファまで行くと、良太は二人に声をかけた。
だが、工藤は良太の目が少し潤んでいるのを見て取った。
「お前、もう寝ろ。また風邪でも引き込んだら何もできないぞ」
工藤にそう言われて良太は「はあ………」とつまらなさ気に返事をした。
できれば工藤らに混じりたかった良太だが、年が明けてもう二度ほど寝込んだことを思い出した良太は、「じゃ、お先に失礼します」と言いおいてまたトボトボと階段を上がって行く。
「あ、じゃ、俺も休みます。お先に失礼します」
森村が言うと、牧も続いた。
「近頃の若いやつら、軟弱だな」
カウンターの中から京助が聞こえよがしに呟いた。
そういう京助も、千雪にミルクティでも持って行ってやろうと、レンジで牛乳を温め、香りのよい紅茶と牛乳を一緒にマグカップに注ぐ。
自分にはグラスにウオッカソーダを作ると、マグカップと一緒に持ってカウンターを出た。
「皆さん、朝飯は七時から八時半、時間厳守で食いっぱぐれないようにお願いします」
リビングを出る時、京助はそう言いおいて階段を昇って行った。
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