「そうだ、工藤さん。佐々木さんが、工藤さんとこの別荘にある作品見せてもらいたいんだと」
沢村が工藤に言った。
「かまわないぞ、いつでも。俺がいなくても平造がいる時なら」
「何かしら? 工藤さんの別荘の作品って」
理香がそれを聞きつけて工藤に聞いた。
「いや、なんか、割と有名な作家の絵とかあるらしいって、こないだの食事会ん時に」
沢村が言った。
「お前もアートにはてんで無頓着だな、良太と同類じゃないか」
工藤が茶化す。
「だからほとんど野球しかやってこなかったんだよ! 芸術に親しむ時間なんかあるかよ」
言い訳もほとんど良太と変わらない。
「そんな有名な絵があるんなら、私もみたいわ」
理香が言った。
「どうぞ、いつでも。ただし、明日夕方から平造の誕生会をやるんで、その時間以外なら」
そこへ宇都宮が戻ってきて、工藤の前と自分の前にグラスを置いた。
「はい、バカルディ」
「お、すまん」
「皆さん、何飲みます? 持ってきますよ」
宇都宮は他の面々に言った。
「焼酎とかあるのか?」
沢村が立ち上がった。
「あるみたいですよ」
「俺自分でいれてきます」
宇都宮は皆からオーダーを取って、カウンターに戻る。
そこでは秋山と直子それにアスカがさっきからボソボソやっていた。
「秘密会議?」
宇都宮が笑みを浮かべて聞いた。
「ええ、まあ。あ、沢村さん、俺、やりましょうか?」
秋山がカウンターの中の沢村を振り返った。
「ああ、大丈夫。お湯はこのポットか」
「そうです」
「了解」
宇都宮は、コニャックやスコッチ、日本酒とみんなのオーダー通りにグラスに注ぐ。
「そういえば、賑やかな人がたりないわね」
ソファの方を見てアスカがぼそっと言った。
「そういえば、そうね」
直子が頷く。
「ああ、藤堂さん、悠さんがちょっと熱っぽいらしくて、ついてるみたいです」
宇都宮がそれに答えた。
「え、悠ちゃん、大丈夫かなあ。作品展に力使い果たしちゃったのかも」
直子が心配そうな顔をする。
「お鍋の後、ユキも顔を見せないわね」
アスカは出会った頃から、千雪をユキと呼んでいる。
「千雪さん、なんか締め切りがあるらしくて、籠ってるって、京助さんが」
これも宇都宮が答える。
「うわ、きっとサボってたんだわ」
訳知り顔でアスカが言うと、「アスカさん、千雪さんらとは長い付き合い?」と宇都宮が聞いた。
「うーん、ユキとは十年来の付き合い? 京助とかは子どもの頃からね」
「なるほど」
宇都宮は頷くと、沢村の後からトレーにグラスを乗せて皆のところへ戻って行く。
「宇都宮さんって、ちょっとやそっとのことには動じないよね」
ボソリとまた直子が呟いた。
「あたしのバスローブごときで驚く輩じゃないわよ。沢村くんは佐々木さんしか眼中にないからだけど」
アスカがボソボソ返すと二人して吹き出した。
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