「じゃ、コニャックを頼むよ」
速水が言った。
「ジントニックお願いできる?」
理香が聞いた。
「わかりました」
「マティーニとかいいかしら?」
彩佳が聞いた。
「もちろん。工藤さん、バカルディでいいですか?」
「ああ」
工藤は頷いた。
「あたし、何を飲もうかな」
ようやくメタル談議が一段落ついたらしく、森村が風呂へ向かうと、直子が立ち上がってカウンターにやってきた。
「あ、あたし、持って行きますね。あたしにはダイキリがいいな」
「OK」
藤堂に劣らず、華麗な手さばきでいくつかのオーダーが出来上がり、秋山はカウンターに置いた。
「こちらは工藤さん、理香さん、速水さん」
トレーにグラスを乗せて直子はソファセットのテーブルに運んだ。
彩佳にマティーニを届けると、直子はちょうど秋山がカウンターに置いたダイキリを手に、スツールに座っているアスカの隣に腰かけた。
「ねえ、アスカさん」
コソコソと唇だけで直子は言った。
「ん?」
「さっきの工藤さんの発言、気づいた?」
「気づかないわけないわ」
アスカはしれっと言った。
「あたし咄嗟にごまかしたから他の人気づいてないかもだけど」
直子はゴクンとダイキリを口にする。
「ねえ。良太だってほろ酔いなもんだから、気づいてないわよ」
「あれ、わざとじゃない?」
「工藤さんがうっかり失言とかないわよ」
「ねえ」
二人がボソボソと話しているところへ、秋山が「何の悪だくみ?」と口を挟む。
「人聞きの悪いこと言わないでよ。あたしたちは繊細だから色々気になることがあるのよ」
アスカはツンと細い鼻を上に向けて秋山に言い返した。
「繊細ねえ」
苦笑する秋山に、「何よ、その言い方。秋山さんだって気づいたんじゃないの?」とアスカが言った。
「何を?」
「すっとぼけちゃって」
と、そこへ数人がやってきた。
「お、皆さんやってますね」
工藤らと入れ替わりに風呂に入った宇都宮、沢村、加藤と辻と研二も一緒にやってきて、ソファは一度に賑わいだ。
ちょうどまた工藤の向かいに座った宇都宮は、「ここもセルフでしたね。工藤さん、バカルディですか? お代わり持って来ましょうか?」と工藤に声をかけた。
「そうだな」
彩佳の近くに座った沢村は、「セシルは?」と理香に聞いた。
「やだ、沢村くん、セシル、人妻だよ?」
代わりに彩佳が割って入る。
「何言ってんだよ。仕事の話してたんだよ。あの人、日本支社の支店長だってから」
「セシル、スキーでかなり疲れて、お風呂入ったらもう、バタンキュー。洋子ちゃんも鍋のお手伝いで張り切りすぎてもう寝てるし」
理香が言った。
「そう言えば、美亜は?」
「フフ、あたしと同室なんだけど、部屋で小笠原くんとずっと携帯で話してるのよ」
「あらら、羨ましいお話」
彩佳の話に理香が肩を竦めた。
back next top Novels
にほんブログ村
いつもありがとうございます
