花さそう33

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 映画のエキストラに牧を連れてきたのは監督の日比野だった。
「割と肝の据わったマジメな役者なんです。若くてタッパもあるし見てくれもいいのに地味に小劇団で舞台をやってて、なんてのかな、いい役者になるって言う片鱗を見た気がして」
 日比野の言葉に感化されたわけではないが、たかがエキストラとはいえ最初から妙にオーラがあった。
 問題俳優二村桃子に目をつけられたのも牧の存在感があったからだろうと、工藤は今にして思う。
 新進の人気俳優という触れ込みで、美聖堂の社長斎藤が推していた二村は、蓋を開けてみればとんでも俳優で、結果工藤不在の折、良太によって一刀両断に役を降ろされた後、今現在は業界からほぼ干されているらしいという噂が工藤の耳にも入っていた。
 美聖堂は青山プロダクションにとっては大事なスポンサーではあるが、理由を知ってむしろ頭を下げてくれたし、斎藤は良太のことも気に入っているらしく、何かというと良太を連れて来いと煩いくらいだ。
「お待たせ、ラーメンと焼き肉定食」
 そこへ良太と森村が両手にトレーを持って戻ってきて、森村が牧の前にトレーを置いた。
「いくらだった?」
「あ、ランチは工藤さんのおごり」
 牧には良太が答えた。
「え、あ、すみません、ごちそうさまです」
 牧は工藤に向き直り、ラーメンに顔がつくほど頭を下げた。
「ごちそうさまです!」
 良太と森村も声を揃えて言うなり、ハンバーグカレーに取り掛かった。
 夢中で食べ終える頃にはもう一時を過ぎていたので、少し休んだら引き上げねばならなかった。
「すまないな、牧、うちの関係でろくに滑れなかったろう」
 コーヒーを持って来た牧に、工藤が言った。
「いえ、久々だったのでこれで充分です。また明日もあるし」
「でも今夜、大寒波が日本列島直撃って」
 良太が携帯を見ながら言った。
「heavy snow!」
 森村も携帯を見た。
「明日も降るのかな」
「せっかくスキーに来たのに、大雪で滑れないのは面白くないよな」
 眉をひそめて良太はボソッと口にした。
「帰るのは月曜の夕方だ。明日もしダメでも月曜に滑ればいいだろう」
 疑わし気に良太は工藤を見た。
「ほんとに月曜丸一日休みでいいんですか?」
「ああ、鈴木さんにもそう伝えてある」
「じゃあ、猫、また鈴木さんにちょっと見てもらえるか聞いてみないと」
「ちゃんと見ておくって言ってたぞ、鈴木さん」
 工藤が言った。
「それに月曜の夜には戻るんだから、心配ないだろう」
「はあ」
 何だか工藤がえらく調子がいいような気がした良太だが、もう帰る時間が来てしまい、皆が立ち上がった。
 

 


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