花さそう56

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「あ、すみません!」
 ペコリと頭を下げた良太を千雪はその腕を掴んだままキッチンを出て行く。
「ほんまにうるさいんや、京助。キッチンは神聖やとか、おかしなとこ研二と共鳴しよってからに」
 千雪はブツクサ文句を並べる。
「まあ、お二人ともほんと料理人って感じですよね~。研二さんは菓子職人としてドキュメンタリー番組出てもらうことになってますけど、京助さんも職人さんの並びに数えてしまいそうですよ」
「モルグで死人と格闘するよりは、俺様の家庭の味レストラン、とかやった方がなんぼかマシか知れんけどな」
 良太は思わず吹き出した。
「それマジいけそう! いっそ、俺様レシピで十五分番組とかいいかも。もちろんネット配信すれば個人視聴率かなりすごいかも」
「良太、頭がすっかり工藤化しよるわ」
 千雪にあらためて言われると、良太は「違いますって」と否定はするものの、さっきも研二の撮影のことを考えていたのを思い出して、完全否定できないことを思い知らされる。
「俺がどうした?」
 背後から言われて良太は振り返った。
「あ、工藤さん」
 風呂掃除をした面々は、早速一番風呂をもらったようだ。
 工藤もセーターにジャケットとラフな身なりで階段を降りてきた。
「遊び過ぎて良太が仕事が恋しいらしいですわ」
 嘯く千雪を良太はちょっと睨みつける。
「ちょ、そんなこと言ってないし!」
「ほう? まあちょうどいい具合に、同じ屋根の下に仕事関連のやつらがまとまってるんだ、明日帰るまでに、理香さんや研二と打ち合わせくらいしておけよ」
 リビングに向かう工藤の背中に、ヤブヘビだ、と良太は呟く。
「休暇ですからね、あくまでも」
 あえて良太は口にする。
「そうだ、千雪」
 リビングに向っていた工藤がまた振り返った。
「竹野がお前のファンだって喚いたお陰で、スポンサーが、ぜひお前と竹野の対談をやってくれってシツコク言ってきたぞ」
「はあ? 冗談も休み休みって知ったはるよね?! そんなんパスやから、絶対!」
 千雪は大きな声で否定する。
 工藤はそんな千雪の言葉など馬耳東風で、「良太、スケジュール入れとけよ」とのたまった。
 良太は千雪を改めてみた。
「余計なこというから、俺までとばっちり」
「俺は受けるやなんて一言も言うてない!」
「パスって言葉とやらないって言葉は工藤さんの辞書にはないって知ってました?」
「すっかり鬼の手先に成り下がりよって!」
「だからそういう言いがかりはやめて下さいってば」
 階段下でそんなやり取りをしていると、アスカが二階降りてきた。
「なあに? 面白い話?」
 フン、と千雪はアスカの方を向いて、「ちっともおもろない話や」と八つ当たりする。
「千雪さん、大人げないです。こうなったら空いてる日、何日か予備日も入れて教えてください。竹野さん、それこそスケジュールタイトなんで、すり合わせしないと」
「何で竹野がユキとスケジュール合わせるのよ!」
 アスカが二人の会話に割り込んだ。


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