そういえば、研二の撮影はまだ先になるが、手元の動き、指先のひらりひらりと何とも優雅な動きを少しじっくり撮らせてもらわないとな、と良太は一切れ一切れ花びらか何かのように重なっていく様を思わず見つめていた。
いつの間にかドキュメンタリー番組の構想に思いが飛んでいる。
長い指は大きくて綺麗で、柔道の有段者として研二の中でどう折り合いがついているのかが不思議な気がした。
折り合いといえば、京助の仕事はモルグでご遺体にメスを入れているわけで、それを考えるとスイーツから鍋料理まであらゆる料理をこなす京助とどう折り合いがついているんだか。
いやいや、背筋がぞくっとするから考えるのやめよう。
良太は首を振って洗い物に取り掛かった。
理香さんも今朝方、華道家だったことを思い出したみたいに生け花やってたよな。
生け花というより大きな木の枝とかたくさん使って形を作っていくわけだからやっぱアートだよな。
理香さんの撮影は春からだから、そろそろ詰めて行かないと。
「お―い、良太ちゃーーーん!」
耳元で喚かれて、「うわっ」と良太は仰け反った。
「びっくりした、何ですか、千雪さん」
「向こうから呼んでも聞こえないみたいやからここまで来たったんやないか」
「え、あ、洗い物に夢中で………」
「ふーん、まあ、ええけど、竹野さんが貴船神社行くいうとこなあ」
珍しくドラマの話を千雪が持ち出してきた。
「え、まさか、やっぱやめようとかナシにしてくださいよ? 竹野さんの貴重なスケジュールに組み込んで撮影して費用も労力もバカにならないんですから」
つい口調がきつくなる。
「ナシにはせえへんわ。ただな、竹野さんが神社に向かうきっかけを作ったんが、たまたま神社に行ってお参りしてきたいう女子らの話にヒントを得てとか、増々三流サスペンスドラマ染みてやめたいね」
「あ、ああ、そこですか。原作だと複雑な思考がわかりにくいからって、久保田さんが考えたんですけど」
確かにちょっと安直な気もしないではなかったものの、どうしてもダメ出しと言う程でもないと、良太は思ったのだが、原作者にしてみると気になるところなのかもしれない。
「あこの場面を映像化するんはちょと難しい思うんやけど、何やこうデジャブみたいな感じに竹野さんに思いつかせるとかや」
「デジャブですか」
良太も何となく千雪の言いたいことが分かりそうな気はするのだが。
「せやから、こう、誰かがナイフを戸棚に仕舞うかなんかを見て、あれ今のシーン、どこかで見たかも、みたいな?」
「あ、なるほど! わかります。実際は見てたのに、忙しさとかに埋没してしまってて気が付かなかったけど、あれってもしかしたらこうじゃなかっただろうかみたいな?」
「それや、それ!」
千雪も大きく頷いた。
「わかります……が、メチャ、微妙なニュアンスの演技が必要になりますよね」
「竹野って、若いけどベテランなんやろ? ええ役者や言うとったやないか」
「はあ。多分、大丈夫だと思いますが、どうやって説明したものか………」
「おい、お前ら! 仕事の話なら厨房じゃないとこでやれ! 邪魔すんじゃねえ」
そこへ京助の怒号が割り込んだ。
back next top Novels
にほんブログ村
いつもありがとうございます
