それより、沢村と喧嘩とかしてませんよね?
良太は心の中で佐々木に問いかける。
「あ、良太さん、明日は何時にこっちを発つんですか?」
その時、良太を探してやってきた森村がもぐもぐさせていたものをようやく飲み込んでから尋ねた。
「どうだろ。明日は晴れるみたいだけど、雪道だし事故とか万が一の時のために、なるべくまたみんなで帰った方がいいと思うけど、それぞれ予定があったりするよな」
良太としては、宇都宮や美亜、牧もよその事務所の俳優たちを連れてきているので、適当なことはできない。
プライベートな休暇だから、マネージャーもついてきていない。
「じゃ、一応、皆さんに、明日の予定確認してきますよ」
森村が言った。
「お、じゃあよろしく」
すぐに踵を返して加藤らのいるテーブルに向かう森村に目をやりながら、ほんと頼もしいし、よく気が付くよな、あいつって、と良太は思う。
「森村くんが入って、ちょっとは仕事ラクになったん?」
シャンパンを飲みながら佐々木が聞いた。
「そうですね、今みたいなのも俺一人の時はみんなの確認取ってから座るみたいな感じでしたから、やっぱラクになってるんだと思います」
「でもさ、良太って、モリーにやらせてる分、自分の仕事増やしてない?」
アスカが鋭く指摘する。
「いやそんなことは………」
あるかも知れない。
「俺も直ちゃんがスケジュール管理してくれるよって動けるんやけどな」
「佐々木ちゃんちょっと目を離すと、仕事やり過ぎるんだもん」
直子の言葉に佐々木は苦笑いする。
「いやあもう、この休暇で存分に休ませてもろてるしな」
佐々木は直子の言葉をさりげなくかわす。
「そういえばネコ、鈴木さんがみてくれてるの?」
早速アスカはスイーツを直子の分ももらってきて、皿を置いた。
「ええ………ってそんなに食べるんですか?」
良太は皿の上の大きなパイと和菓子二個を見てつい、眉を顰めた。
「スイーツは別腹だもんね」
頷いた直子もまず和菓子から頬張った。
「美味しーい!」
直子とアスカが食べているところを見ていると、良太も食べたくなった。
「佐々木さんも食べますよね? 取ってきます」
立ち上がって良太はいそいそとスイーツコーナーへと向かう。
スイーツの前では千雪が、「目移りするわ」と選びかねているようだ。
「いくら何でも全種類食べるわけにはいかないし、俺はこの梅っぽいやつとパイにしよっと」
佐々木の皿にはパイと一緒に夜空に見立てた羊羹に金色の月と星が浮いている綺麗なのを乗せた。
二つの皿を持って振り返ると、近くのテーブルでは理香や彩佳、それにセシルがやはりスイーツと紅茶でまたおしゃべりしていた。
フランス語混じりの日本語で、四六時中おしゃべりしてる気がする。
「あ、良太ちゃん、スケジュール確認したから、またラインするわね」
傍を通りかかった良太に理香が声をかけた。
ドキュメンタリー番組の撮影のスケジュールをさっき聞いておいたのだ。
「よろしくお願いします」
そう言って歩き出そうとすると、向こうから来た工藤と出くわした。
工藤は良太の持っている皿を見ると、途端に顔を顰めた。
「よく食うな、お前は」
「工藤さんもいかがです?」
するともっと苦々しい顔ですり抜けて行った。
良太は肩を竦めて、「絶対美味しいのに」と呟く。
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