絶対起きざるを得ないだろうヘビメタがジャカジャカ鳴り始めて割とすぐに、良太は目を覚ました。
かなりぐっすり寝た気がして頭も結構すっきりしている。
良太はトイレとシャワーを済ませると、そういえば工藤は夕べ隣に帰ってきたのだろうかと思いながら、バスローブのまま冷蔵庫のドアを開けた。
「え、何、これ」
自分が入れた覚えがないコンビニの袋を取り出して、中を覗いた良太は、ちょっと軽い驚きだった。
「これ、まさか工藤?」
以外にいるはずがない。
中にはサンドイッチとサラダがおよそ二人分入っている。
今日は確か午後からスポンサー回りのはずで、いつもなら工藤は時間がある時は高輪の部屋に帰って、マンションに入っている会員制のスポーツクラブでプールで泳いだりジムで汗を流す。
最近、ずっと東京を離れていることが多かったから、てっきり工藤は高輪だと思っていたのだが。
工藤が隣にいるのか、と思うと良太は何となくそれだけで嬉しい。
良太は張り切ってジャージに着替え、フライパンでスクランブルエッグを作り、ソーセージを焼いた。
少し待つ間にコーヒーをセットし、猫たちの器にドライフードを入れ、水を換えてやる。
それから皿にスクランブルエッグとソーセージを盛り付け、それにサラダを添えて、マグカップを用意すれば、簡単ながら炬燵の上に朝食の準備は整った。
まだ八時過ぎだから、ゆっくり朝食も取れるはずだと、隣と繋がったドアをノックした。
「起きてます?」と聞いてみると、「ああ」という声が聞こえた。
やはり隣にいたのだ。
「朝メシ、用意できたから」
やがてドアが開いて、バスローブ姿の工藤がのっそりと現れた。
「おはようございます。サンドイッチありがとうございます」
「おう」
良太はベッドに座った工藤の前にコーヒーを置いた。
「今日も遅いんですよね」
炬燵の前に座った良太は、スクランブルエッグやサラダを口に運ぶ。
「今夜最後は斎藤さんだからな」
「ああ」
化粧品メーカーの老舗美聖堂の社長斎藤は、フジタ自動車の藤田と同類で、妙に工藤を気に入っている。
飲み始めるとざるだから長い。
良太も一緒に付き合ったことがあるが、早々に潰れてしまった。
だが、青山プロダクションにとっては大事なスポンサーであり、今回の映画にもかなりなバックアップをしてくれている。
「千雪と竹野の対談、午後からか?」
「あ、ええ、二時から、Kホテルです」
良太も今日は身を引き締めてかからないと、失敗は許されない。
小林千雪原作のドラマ『今ひとたびの』では今回ゲスト主役で出演しているのが、人気実力ともに兼ね添えた俳優竹野紗英だ。
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