「なんか、思ったんだけど、日本人てやっぱり礼儀正しいっていうか、なんかストイックですよね、恋人同士でも、小笠原さんと美亜さん、休憩時間に二人でいてもハグするとかキスするとかもなくて静かに話してるって感じだし」
美亜がスタジオにいたのは、坂口の妙案で急遽小笠原と接近してみよう、ということで、バーの撮影が終わってからも出演回数が増えたからだ。
「俺なんか高校の時サラと付き合ってた時、授業以外四六時中一緒でイチャイチャしてたけどな」
「それは、やっぱ、文化の違いとか、だろ。日本で公な場所でイチャイチャしたりしないんだよ」
良太は苦笑し、もっともと思われる説明で森村を窘める。
「そうなんですね~、でも工藤さんなんか一見ガイジンだし、キスもハグもなくて、良太さん寂しくない? 恋人同士なのに」
ド直球な疑問をぶつけられて、良太はかあっと顔を赤らめる。
「だから、俺らは別に………」
「今更俺に隠すようなことじゃないでしょ? まあ、その分二人の時はイチャイチャしてんだろうけど」
「お前な……」
何か弁明しなくてはと思う良太だが、うまい言い訳が出てこない上に、スキー合宿中に工藤が二つの部屋の間に作ったドアなんかが頭に浮かぶ始末だ。
「つきましたよ」
促されて良太は車を降りる。
「お疲れ様です。お休みなさい」
「ああ、お疲れ様」
森村は明るく笑うと、青山方面へとハンドルを切った。
「ったく、あいつは」
まだ頬が赤らんでいる。
「素直で表裏もない、いいやつなんだが」
良太はブツブツ口にしながら、警備員に挨拶をしてエレベーターへと向かった。
工藤の部屋の灯りは消えている。
まだ戻っていないのだろう。
接待のあと、下柳に会うと言っていた。
ドアを開けるとナータンとチビがナアナアと良太の足元にまとわりつく。
疲れを忘れる瞬間だ。
「よしよし、遅くなったなあ」
良太は二つの猫をしばらく撫でてやると、ご飯の用意をした。
ドライフードをメインに、たまにおやつのちゅーらをあげている。
大抵どんな猫でも夢中になるというヒット商品で、もちろんナータンもチビもちゅーらと口にしただけで走り寄ってくる。
ひとしきり舐めて猫たちが満足したらしいのを見届けると、良太も立ち上がり、風呂に湯を入れるとスーツを脱いだ。
ふっと目を覚ますと風呂の中で、良太は慌てて湯から上がる。
髪をざっと乾かすとベッドに潜り込んだ。
工藤が先日取り付けたドアを開けたのは日をまたいでしばらくしてからだった。
一応ノックはしてみたが反応がなく、案の定良太はぐっすり寝込んでいた。
相変わらず寝顔は子どもっぽいなと思うと自然笑みが浮かぶ。
つい指で頭をそっと撫でる。
朝食を作ると意気込んでいたのを思い出して、コンビニで買ってきたサンドイッチやサラダを冷蔵庫に仕舞うと、工藤は自分の部屋に戻って行った。
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