春立つ風に141

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「ほんとに」
 良太が頷いて、しばし沈黙があった。
「お持たせで失礼ですけど、美味しそうだから早速召し上がって」
 明るい鈴木さんの声が降って来て、二人にちょっと笑みが戻る。
「ありがとうございます!」
 紅茶の香しさが鼻孔をくすぐる。
「CMの方、一度良太ちゃんにも見ていただきたいと思ってね。この上なくいい出来だから」
 藤堂が胸を張って言う。
「それはよかった。こっちがいろいろ難ありで、なかなか顔出せなくてすみません」
「いやいや」
 しばらくシュークリームとお茶で和やかなひとときを過ごしたあと、藤堂が徐に口を開いた。
「それで? 篠原が手島と柏木さんを殺害ってことで、事件は決着ってわけでもないのかな?」
 うーんと良太はほんとに唸った。
「実は、千雪さんの仲間の協力でいろんな情報を得られたんですが、それだけでないマル秘なところからも」
「うんうん」
 藤堂は良太が声を落としたので、マル秘な情報をここでは話しにくいのだろうと察した。
「どうかな、もしちょっと佐々木オフィスに一緒に顔を出してもらえればありがたいんだが?」
「え、あ、わかりました。じゃ、早速。今動かないとあとがつかえていて」
 藤堂の提案に、良太は立ち上がった。
「すみません、ちょっとこれから、佐々木オフィスに行ってきます」
 鈴木さんに声を掛けると、良太はハンガーから藤堂にコートを渡し、自分のコートを手に、タブレットをリュックに放り込み肩に引っ掛けた。
「行ってらっしゃい。気を付けてね」
「はーい」
「美味しいお茶をごちそうさまでした。失礼します」
 藤堂はあくまでも紳士然と鈴木に言うとオフィスのドアを開けた。
 良太が藤堂の車の助手席に乗り込むと、藤堂は一番町へとハンドルを切った。
「篠原が若頭の息子の大石健一郎と繋がっていて、押収したクスリなんかを横流ししていたことはどうやら本当らしいです。が、警察が今のことろ大石まで辿り着いているかどうかはわかりません」
「なるほど」
 車の中で良太は、ひょっとすると篠原は手島と柏木の殺人に関しては嵌められた可能性があると説明した。
「マル秘情報というのは、たったさっき、小学生の男の子から俺宛に紙袋を渡されて」
「何だいそれ、スパイ大作戦?」
 藤堂は俄然面白そうに聞き返した。
「もどきをやりそうな人がいましたよね、魔女オバサン」
「ハハハハ、また魔女登場? それで?」
 良太は多佳子がリークしてきた柏木のことをざっと話した。
「そうか。内部からの情報だから信ぴょう性はあると?」
「ほんとは、とっくに千雪さんがそう推理していたんです。柏木弁護士がロスから呼び寄せた女性を長岡と名乗らせて家政婦として雇ったのは、いずれ自分の身代わりにするためだった、って」
「うーん、そうか。実際もし殺人に手を染めていたとしても柏木弁護士はある意味被害者なのかもな。こちらもちょっと柏木弁護士に関する小ネタを仕入れたんだよ」
「え、何ですか?」
 良太は運転している藤堂を見た。

 


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