「いや、柏木弁護士が大石に何か仕掛けてった可能性があるとかって、千雪さんサラッというし」
「うん、確かに、篠原をまんまと陥れたくらいだから、大石が無事ってのも疑問だな」
藤堂は頷いた。
「大石がどうなろうと知ったこっちゃないですけどね、要は工藤に飛び火するようなことにならなければ」
良太にとってはそれだけが問題なのだ。
「おっと、良太ちゃん、ほんとは冷ややかに怖かったんだよね、工藤さんさえ大丈夫ならあとはどうなろうとってやつだね?」
「もう、おちょくらないでくださいよ」
良太はクックッと笑う藤堂を怪訝な顔で見た。
「まあ、これは俺の希望的な想像だけど、柏木弁護士は工藤さんに火の粉がかかるようなことはしないんじゃないかと」
その理由が何だとは言わず、藤堂は海外ロケの話に切り替えた。
青山プロダクションのビルの前で車を停めると、「来週頭にはニューヨークに飛ぶので、また一度打ち合わせよろしく」と言って、藤堂は去って行った。
それから、宇都宮と小笠原W主演の『貴様と俺(仮)』の都内ロケ、さらに小林千雪原作『いまひとたびの』のスタジオ撮影、と連日怒涛のように良太の時間は過ぎた。
「来週頭でオールアップだ。火曜には戻る。そっちは何かあるか?」
例によって箇条書きのような業務連絡がメチャ久々に工藤から入ったのはもうすぐ今日が終わるという金曜の夜のことだった。
「こちらは順調です。坂口さんにタイトルを変えた方がいいんじゃないかって言ったら、じゃあ、考えろとか、俺に投げたんで、ちょうど歩いてた通りを見て、『コリドー通りで』とかって適当に言ったら、坂口さんが、それがいい、『コリドー通りでよろしく』にするって決まっちゃいました」
「フン、いいんだろ、それで」
軽くいなす工藤に、ちぇ、バカにしてるし、と良太は内心ムッとする。
「東洋グループの方は、来週から第二弾の撮影で、ニューヨーク、フィレンツェ、ケニアへ渡航するってことです。藤堂さん、佐々木さん、沢村と、八木さん、有吉さんがケニアに同行してくださることになってます」
良太が一通り報告を終えると、「わかった」と一言で工藤の携帯は切れた。
「ったく、もっとほかに………」
言いようがあるだろう、とはもうさすがに良太も言い飽きた。
「くっそ、寝るぞ、ナータン、チビ!」
ベッドに潜り込む良太を見ると、猫たちがぴょんこと毛布の上に乗ってきた。
二つでくっついて寝ていることもあれば、こうしてベッドの上に乗っかって寝たりする、猫たちはその時々に居心地がいいところをみつけるのだ。
寝息を立てる可愛い小さい頭を撫でてやりながら、工藤が戻ってくることにちょっとだけ嬉しくてホッとした良太はあっという間に眠ってしまった。
翌朝、あたふたと出かける用意をしていた良太は、「良太ちゃん、ランドエージェントさんからお電話よ」と鈴木さんに言われ、何だろうとあまり気が進まないながら受話器を取った。
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