まあでも、工藤と久々言いたいことを言い合って、ちょっとすっきりしたかも。
その時良太の脳裏に、以前フィリピンで日本人の男が大量の大麻所持で警察に逮捕され、終身刑になった石尾不動産社長のことが思い出された。
あれもおそらく波多野が関係しているのではないかと思うが、柏木のことについても良太が聞いたところで何をどうしようもないのだ。
「工藤さん、何だって?」
笑みを浮かべながら、秋山が聞いた。
「海老原さんにもうかまうなとかって、仕事だから無理ですよ。秋山さん、工藤さんに何吹き込んだんですか」
「いや、別に、ただ、今夜良太ちゃん海老原さんとご飯食べるらしいって言っただけで。何かえらい剣幕そうだったね」
言いながら秋山はまたクスクス笑う。
「電話口であんな怒鳴られたら、難聴になっちゃいますよ。秋山さん、海老原さんとご飯じゃなくて、野口さんと美亜さんと海老原さんと俺と小笠原でご飯ですから」
良太はそう訴えたが、秋山がわざと枝葉末節を省いて海老原の名前だけ工藤に伝えたことはわかっている。
ちょうどそこへ鰻が届いたので、四人は窓側のソファセットで豪華なランチとなった。
美味しいものの前にはイライラも吹っ飛ぶわけで、和気あいあいとしたひとときを過ごせば、また頑張ろうという気も起きてくるというものだ。
「工藤さんも、美味しいものとか食べてないのよ。だからああやって怒鳴り散らすんだわ」
アスカが鰻を頬張りながら言った。
「ようやくこだわりぬいた映画のクランクアップを迎えられて、むしろ怒鳴り散らす余裕も出てきたってところじゃないですか?」
秋山の言うことにも一理あるかも知れない、と良太は頷いた。
いくら変装したっていっても、確かに猫の手軍団の面々は皆でかくて髭面の強面だったりで、すぐに誰だかわかってしまいそうではある。
案の定工藤も千雪と良太がコソコソ猫の手軍団と連絡を取り合いながら動いていたことなんか、とっくにお見通しだったようだ。
確かに工藤はそんなことに意識を向けるようなヒマもなかったのだ。
京都のホテルの一室では、イライラしながらやっと繋がった電話の相手に、工藤はまた文句を並べていた。
「いい加減、あのクソババアに、良太への接近禁止令を突き付けてやってくれ」
すると相手はちょっと意外そうに、「おやまた、多佳子さん、良太ちゃんに接触してきたんですか」と言った。
「良太ちゃん、えらく多佳子さんに気にいられたようですね」
「ようですね、じゃないだろ、あのババアは良太の人の好さに付け込んで何だかだと絡んでくる。何とかしろ!」
相手ののらりくらりとした口調が、また工藤のイライラを助長させる。
「前回も一応釘は刺したんですがね。まあ、どこで綻びがでるかわかりませんから対処いたしますよ」
「良太のバカはまた千雪と結託して、ヤクザの周りを嗅ぎまわったりしやがって」
「お陰で、森村を通じていろいろ情報をくださったんで、こちらも動くことができたんですよ」
「それこそ冗談じゃない!」
声を上げたあとで、一呼吸置いて工藤は言った。
「波多野、これで大石の一件は片がついたのか?」
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