春立つ風に211

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 良太の顔を見た美亜は顔を曇らせる。
「パパが何とかって議員のお嬢さんを礼央に紹介しようとしたんだけど、礼央がそのお嬢さんを置いていきなりレストランを出て日本に戻っちゃったんです。それでママが怒って新に電話で文句を言ったらしくて………」
「はあ………」
 聞いてみたはいいが、良太にはそれ以外何も言うべき言葉が見つからない。
「パパもママも礼央がそんなの取り合うわけないってまだわかってないのよね」
 美亜は盛大な溜息をついてから、「子どもの頃から新のこと好きだったけど……」と言い出した。
「でも、あたしは礼央と新のことを応援してたのに………礼央はあたしのこと全然わかってないのよね」
「そう、なんですか」
 何とも間が抜けた言葉しか、良太も思いつかない。
「小笠原、ちょっとふざけたとこもありますけど、いいヤツですよ」
 慰めに言った良太の言葉に、美亜の表情がハッとするほど明るくなった。
「ええ、祐二って面白い」
 美亜の小笠原に対する見解には多少疑問が残るものの、今のところ二人は楽しそうだ。
 その夜の撮影は、たびたびこだわりを持ちだした奥寺と坂口の意見のすり合わせで少し長引き、終わったのは明け方の四時になった。
「お疲れ。良太ちゃん、スキーいつにするかわかったら知らせて」
 帰り際、良太にそう言うと、宇都宮は迎えに来たマネージャー田之上の車に乗り込んだ。
 皆が疲労困憊の状態でそれぞれ帰途についたが、奥寺と坂口は工藤を巻き込んで店を出てからもまだ話し込んでいる。
「ったく、タフなオヤジどもだよなあ」
 良太は森村と車で工藤を待つ間、ボソリと言った。
 良太もお疲れみたいだから自分が運転すると、森村がハンドルを握っている。
「でも俺、何か現場、好きですよ。今日いろんな人と話したし」
「みたいだな。英語圏の人が結構いたし、やっぱ向こうが懐かしいんじゃないのか?」
 森村はすると小首を傾げる。
「うーん、話すのはやっぱり英語の方がラクだけど、今は日本の文化を知るのも面白いかなって」
「文化か。俺も文化についていろいろ勉強しなけりゃなあ」
 文化と聞いてドキュメンタリー番組のことが良太の頭の中にどっと押し寄せる。
「さっき、大森美術の和穂と話してたんだけど、ひとつ日本の文化でわかったことがあった」
 森村が楽しそうに切り出した。
「和穂さん? ああ、彼女面白い人だよね」
「前にサラが言ってたBLって何のことだか、やっとわかった」
「は?」
 良太は森村を見つめて、一瞬把握しかねる。
「和穂が教えてくれたんです。BLって重要な日本の文化だって」
「B………L………????」
「知ってますよね? 今、ドラマも結構人気みたいじゃないですか。青山プロダクションでは、BLのドラマってやらないんですか?」
 良太は返答に詰まる。
 和穂がいろいろ妄想好きだとは知っていたが、BLか。
「和穂って、前にNYに留学してて、英語、ネイティブかってくらい、いっぱい話しました」

 


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