「えと、だから、その、パーティが終わって帰ろうとしたら、エレベーターホールで出くわしたんですよ、そのおばあさん、ハハハ………ほんとに鼻が魔女っぽくて、鼻緒が切れて足を挫いたから部屋まで連れてってくれないかとかって………」
上目遣いに工藤を見やると、工藤は増々険しい顔をして見下ろしている。
「お前はそれで、ホイホイ、部屋まで連れて行かれたのか?!」
工藤は凄みのある声で尋ねた。
「いや、だって、お年寄りが困ってたら手を貸しましょうって、小学校で教わらなかったのかよ!!」
まるで良太が悪いかのように責められて、良太は声を荒げる。
「知らない人について行っちゃダメだってのは、教わらなかったか?」
茶化して皮肉る工藤を良太は睨み付けた。
「それで? そのお年寄りがどうしたんだ?」
「だからその………」
良太は言葉に詰まる。
何ていえばいいのかわからない。
本当のことを言って工藤が俺のこと遠ざけようとかするんじゃないかとか、かといってごまかそうにも巧いごまかし方が浮かばない。
「だから何だ?!」
「だから、部屋行ったら、足挫いたとかウソで、どうやってか俺のこととか俺の家族のこととかまで知ってて、何ンかガタイのいい黒服みたいなヤバいめのオッサンが三人ほどついてて…………」
工藤の形相が険しさを増した。
「何? いったいどこのどいつだ?! その魔女ってのは?! 聞いたのか?」
良太の両肩を押さえつけるように工藤の顔が迫る。
「だから、ネットに出回ってる俺が怪我した時の動画で、あんたのこと見て気になったんじゃないかって、波多野さんが…」
「………何で波多野が出てくるんだ?!」
「だから、まさか俺に近づくとは思わなくて焦ったって、帰り送ってくれて……金輪際、魔女オバサンが俺にもあんたにも近づかないように釘さしとくって」
「まさか、中山の…………!?」
コクコクと頷いた良太は工藤の目に殺気すら感じた。
「あんの………クソババアがあああっ!!!!!!」
吠えるとはまさしくこのことだろう。
良太を離した工藤は壁を拳で打ち付けた。
工藤のもどかしさや憤りが痛いほど良太の胸にも伝わってくる。
クソ、俺にももっと力があったら……
工藤のほんとの懐刀になれたら、こんな苦し気な思いをさせないで済むのに。
良太は唇を噛む。
腕っぷしも弱いし、頭も半人前、っんとに俺、何一つ工藤のためにできることなんかないんだ。
自分が情けなくて嫌になる。
だがそれでも、今できる限りのことはやらないと。
「とにかく、俺の素性調べるとかはいくらでもできると思うけど、今夜のパーティのことや俺が行くこと知ってて、あらかじめホテルに部屋を取ってたってことで、まさか会社に盗聴器とか仕掛けられてないかとか、俺ちょっと心配になって」
ややあって、良太は何とか自分を落ち着けて言った。
「千雪さんの友達に、そっち方面詳しそうな人がいるんで、ちょっと会社とか調べてもらおうかと思って」
工藤がようやく顔を上げた。
「あの、それでもしかして波多野さんも何か仕掛けてるかもだけど、そっちは改めて仕掛け直してもらうってことで」
良太は話を続けた。
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