月鏡17

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 カリカリを新しい皿に入れてご飯スタンドの上に置くと、ウエットフードを二つに分けてこれもカリカリの横に置く。
 はぐはぐと猫たちが懸命に食べるのをしばし眺めて癒しをもらってから、良太はようやくスーツを脱いでバスルームに飛び込んだ。
 バスタブに湯をためるうちにシャワーで汗を流すと、湯を止めてバスタブに身体を沈めた。
「でもさ、よく考えたら、魔女オバサンもだけど、波多野ってやっぱ怖ぇ~! なんで俺があのホテルにいて、魔女おばさんに連れ去られたってわかってんの? 何、まさかどっかに盗聴器とか?」
 調べたことはないが、あり得ないことはない。
 だが、工藤のことを思うと、この際、盗聴器が仕掛けられていようが調べない方がいいかもと思う。
 万が一何かあった時に、波多野が工藤を追えなくなった時の方が問題だ。
 じゃあ、魔女オバサンは俺をつけてたりしたってこと?
 それこそ盗聴器とか、ないよな?
 そっちは調べないとまずいかも。
 うーーーん、もし仮に盗聴器があったとして、どっちのやつかとか、どうやって調べたらいいんだ!
「千雪さんの友達、加藤さんって言ったっけ? あの人詳しそうだよな。千雪さん経由で頼んでみようかな」
 そんなことを呟きながら、良太はいつの間にか瞼が落ちてきた。
 がくんと頭が湯に落ちたところで、目を覚ました良太は、「やばい、やばい」とバスタブから出た。
 髪を乾かしていた良太はドライヤーの音に混じって携帯が鳴っているのにやっと気づいて、ドライヤーを止めた。
 携帯を見ると、工藤は二度目かけてきたらしい。
「あ、すみません、風呂、入ってて」
「カボチャパーティは終わったのか。藤堂のヤツよくよくヒマを持て余してるようだな」
 工藤には詳しいことは話していなかった。
 話したところで、パーティやら宴会やら嫌いな工藤に、それに沢村のことなんか気にも留めないだろうと良太は思ったのだ。
「いやまあ、藤堂さんは、まあ……ハハハ……パーティはいいんですが………」
 つい、そんなことを口にしてから、やっぱ工藤には言わない方がいいだろうか、と逡巡する。
「いいんですが、何だ? 何かあったのか?」
 良太の科白の微妙なニュアンスに、工藤は気づいたらしく、問いただした。
「いえ、あの、何かあったとかってほどでは…………」
 うーーん、ウソのつけない俺ってどうよ?
「いや、その、ハロウィンパーティに行ったら、魔女オバサンと出くわしたってくらいで……」
「魔女オバサン? ………ちょっと来い」
 電話の向こうから、大魔王のような低く地の底から響くような声がのたまった。
 正直者過ぎるって、やっぱ生きていく上で損するよな。
「とっとと吐け。何があった?」
 隣の部屋のドアを開けると、バスローブの工藤が仁王立ちになって良太を迎えた。
「いや、何がって……ほどじゃ………」
 笑ってごまかそうにも、笑いがゆがんだ。
「やっぱ、ハロウィンなんで、パーティの帰り、魔女に出くわしてですね………」
「パーティの帰り?」
 怪訝そうに工藤は良太を睨み付ける。


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