「そうだよ、何で俺に近づいてきたりしたんだよ、あの魔女オバサン! ちゃんと言っとけよな、工藤との関りがちょっとでもあるとか既成事実作ったら、警察が鵜の目鷹の目なんだし」
良太は勢い込んで言った。
「残念ながら、私はあの魔女オバサンとは仲良しこよししていません。私は先代の命を受けているだけですから、魔女オバサンは私の存在は知らないはずです」
いつものように淡々と波多野は語る。
「とにかく、もう二度と近づくことはないようにします」
サラリと波多野は断言した。
「はあ………けど、いったい何だってあの魔女オバサン、俺騙して、俺に近づいてきたりしたわけ? わけわかんないし!」
怖いものがなくなった気になった良太は、文句をぶちまけた。
「あのネット動画で、工藤さんが素になって尋常じゃないようすを見て、あなたの存在が何なのか知りたくなったんじゃないですか」
良太はムッとしたまま波多野の言葉を聞いていた。
「ひょっとして、俺のこと邪魔だと思って、とか………」
あり得ないことはないだろう可能性を良太は口にする。
「うーん、どうですかね、だったら返してくれたりしないんじゃないですか?」
そんなことも波多野はクールに言ってくれる。
良太は急に背筋がゾゾっとした。
やっぱり、あのまま簀巻きでコンクリート詰め海の中とかってなったら、誰も俺がどうってわからないじゃん!
この波多野だって工藤さえOKならってオッサンだし、俺がどうなったってな。
くっそ!
もし、んなことになったりしたら、ぜってぇ化けて出てやるからな!
魔女おばさんめ!
遺書とか今のうちに書いておいて、俺に何かあったら、工藤がそれを見つけて警察に届けるっていうやつ。
俺をどうにかしようなんて、千年早いんだよ、魔女おばさんめ!
良太がああでもないこうでもないと頭の中で対策を練っているうちに、車は乃木坂の会社前に着いた。
「お代は結構です」
波多野は言った。
「このタクシーって、無登録の偽物?」
「まあ、ハロウィン限定のゾンビタクってやつですよ」
初めて聞く波多野のボケのようなセリフに良太は笑っていいのか、マジなのか、戸惑った。
「動画の工藤さんを見たのなら、魔女オバサンもおそらくあなたに何かあれば祖母であれタダではおかないだろうことはよくわかったでしょうから、下手なことはしないと思いますよ」
降りようとした良太に、波多野は付け加えた。
「とにかく金輪際、彼女には工藤さん自身にもあなたにも会社にも関わっていただきたくはないので、こちらとしても何かしらのお灸は据えておきますので、ご心配なく」
良太を残して、ゾンビタクは走り去った。
ふうっと大きく息を吐いて、良太はエレベーターへと向かった。
既に十一時半を過ぎている。
工藤が隣の部屋にいるのか、高輪に行ったのかここからではわからない。
ちぇ、もちょい早かったら、話くらいできたかもなのに、あの魔女オバサンのお陰で!
ハロウィンだからって俺の前に現れなくてもだよっ!
良太はプンスカ怒りながらドアを開ける。
ナーーーン、ニャワンと、すぐさま小さいやつらがとことこ駆け寄ってきた。
「遅くなったね~、よーしよし」
二つの猫を交互に撫でてやると、着替える間もなくまずご飯だ。
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