「まあ、これでネットワーク繋いでも問題ない」
携帯やタブレットも問題がなく、加藤のお墨付きがでたところで、しばしのコーヒーブレイクの後、二人は帰って行った。
「なんだかんだ言っても、頼りになるよな、みんな」
何か、俺だけ、頼りないって気がする。
俺も野球以外に何か極めるとか?
良太は首をひねる。
どこをどう取ってもこれと言って極めたいものが見つからない。
というか、極められるもの?
パソコン関連ならと思うが、やはり時間がない。
残っていたデスクワークをこなしてから電気を消し、オフィスを施錠してトボトボと自分の部屋に上がる。
ドアを開けた途端、にゃーーーーーーん、とニャンコズが飛んで来れば、しばし厄介ごとも忘れるというものだ。
「遅くなったな、怖いお兄さんは帰ったからな」
さっき加藤にこの部屋を調べてもらう時は、ニャンコズはベッドの下あたりに隠れてしまって息を殺していたらしい。
可愛いやつらはほんとに癒しだ。
はぐはぐとカリカリや猫用小魚などを食べているところは、ほんとにいつまででも見ていられる。
「風呂入ろっと」
風呂に湯を張っているうちに猫のトイレを掃除していると、ニャンコズもお腹がいっぱいになったようで、毛づくろいに専念している。
今夜も工藤はフルスロットルだ。
湯に浸かって窓の外を見ると、今日は晴れていたからくっきりと、上を向いた細い三日月が空に浮かんでいる。
何だか、ここんとこ工藤、やけに俺に優しい気がするし。
いや、呆れかえってるとか?
むざむざ敵の手に飛び込むとか、ほんとに舎弟だったら使えねぇよな、俺。
せめて仕事だけでもきっちりやらないと。
でも千雪さんらと一緒のホテルとか、仕事が終われば少しだけ楽しみでもある。
今度の撮影は、何も起きないでほしいよな。
今回もベテラン俳優川島剛志がいるし、ワキのベテランさんたちも数人いるからな、失礼のないようにしないと。
主役級でなくても、ワキのベテラン俳優たちは重要な役割を担っている。
良太も小学生の頃見ていた子供向けの戦隊ものでよく顔を覚えている俳優さんもいる。
どちらかというと、今ドラマで主役を張っている大澤流とかより、そういうワキで出ていたおじさんに直に会うと、勝手に懐かしく思ってしまう。
もう七十代くらいか。
それに彼らの演技に対する姿勢は頭が下がるものがある。
大抵、舞台とかをメインでやっていたり、劇団に所属していた俳優が多い。
「とにかく、気を引き締めてやらないとなあ」
良太はザバッと顔を洗う。
「くっそ、知らない人について行っちゃダメだって、肝に銘じとくさっ!!」
己を叱咤激励して、良太は拳を握りしめた。
back next top Novels
にほんブログ村
いつもありがとうございます
