週刊『東京芸能』が妙な記事を載せているのを見つけたと、嘱託カメラマンの井上がオフィスに寄って良太に雑誌をつきつけたのは翌朝のことだった。
アスカと沢村の顔写真がデカデカと見開きに載り、関係者の話として暗に青山プロダクションとアスカが人気選手を利用したやらせ記事をスポーツ紙にスクープさせた云々とこき下ろした文言がダラダラと続いている。
ただしネットでもその手の記事を探したが、他にはこれと言って似たような記事もみあたらず、なのに、メジャーというほどではない『東京芸能』だけにそんな記事が載っているのが、非常に妙なのだ。
さらには、以前沢村とそのどこぞの令嬢とのスクープにはなかった、実際のパーティ内でのショットまで掲載され、沢村以外の人間には目隠しが施されているが、写真には数名の男女が写り込み、パーティが開催された会場でなければ撮れないものだ。
「こっちも蛇の道は蛇ってヤツで、ちょっと手を回して探ってみるよ」
プラグインの藤堂もその雑誌を見たらしく、気になったと電話をくれた。
こんなの工藤が戻って怒鳴り散らす前に片をつけたい。
「真岡様という方なんだけど、至急社長と話したいっておっしゃるの」
鈴木さんが電話を取り次いだ真岡と名乗る相手が何者なのか、良太は脳みそを総動員してようやく辿り着いた。
沢村の父親、沢村宗太郎が社長を務める朝日産業及び沢村家の顧問をしている真岡法律事務所の所長である真岡弁護士からだった。
良太は深呼吸して怒りを極力抑えつつ、電話に出た。
忙しい合間をぬって藤堂が『東京芸能』の情報を持って青山プロダクションを訪れたのは翌日のことだ。
相変わらず、忙しいとは到底思えないゆったりした雰囲気で、プラグインのオフィス近くにある有名パティセリーのロールケーキを手土産にして鈴木さんを喜ばせている。
「え、そのスパイ大作戦させた子にそんな危ないことまでやらせたんですか?」
「またまたそんな人聞きの悪い、演劇のためにいろいろと経験したいって、その子が言うからつてを頼って編集部を紹介しただけだよ」
要は知り合いの劇団員に、『東京芸能』編集部にバイトとしてもぐりこませ、その記事を書いた西村という記者のパソコンから、入っていた画像を携帯に送らせたところ、明らかに慈善パーティの時の写真だったというのだ。
西村は頼まれて提灯もち記事とか、たまに怪しいネタとか拾ってろくに裏もとらずに書くとか、どうも編集部でもあまりよく思われていないらしい。
藤堂はその西村が近くの喫茶店で会ってたのが真岡弁護士事務所のお抱え興信所の大坪という男だということも突き止めた、という。
つまり、真岡が西村を使って沢村とアスカがデカデカとスポーツ紙の一面を飾った記事は、青山プロダクションのやらせだ云々の記事を書かせたということだ。
「こちらも真岡弁護士直々に、工藤宛に電話がありまして」
良太は真岡からの電話内容の録音データをパソコンで再生して藤堂に聞かせた。
『芸能誌に妙な記事まで載せられて、しかも御社が仕掛けたでっち上げということであれば沢村氏はもとより朝日産業としても新聞社や御社に対して名誉棄損での訴訟もやぶさかではない』
『沢村氏というと、どの沢村氏でしょうか?』
『何を寝言を言っているのかね? 沢村智弘氏に決まっている!』
これを聞くと、藤堂は「おそらく沢村宗太郎氏はご子息に対して大いなる認識不足があるんだろうね」と言った。
沢村の怒りの真実をこの父親は全くわかっていないのだと良太は思うと、少し悲しくなった。
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