これらのことを踏まえ後日早速、芸能誌にわざわざ青山プロダクションのでっち上げだというでっち上げの記事を掲載させたことも含めて、沢村宗太郎が顧問弁護士の真岡を通じて興信所の大坪に沢村だけでなくアスカのことまで探らせ、その際に二人の部屋に忍び込み、盗撮させたことなどで、沢村宗太郎に対して名誉棄損での訴訟を起こすだけでなく、大坪は住居不法侵入罪、真岡やひいては沢村宗太郎自身もその教唆で立件されることもありうる、等のことが小田弁護士から沢村に告げられた。
沢村は激怒し、小田弁護士に直ちに告訴でも何でもしてくれるようにと息巻いたが、ことはそう簡単には進まなかった。
そうこうしているうちに工藤や志村、小杉が帰国した。
工藤と志村は疲れた顔でオフィスに現れたが、小杉は空港からそのまま、母親が入所する施設に向かった。
小杉の渡欧中は、妻や息子、娘らが交代で施設から連絡があると対応してくれていたのだが、認知が進んだ母親は、一人息子である小杉のことはわかるようだが、小杉以外の人間に対しては全く誰が誰だかわからないため、苦労していた。
「小杉さんのことも時折、亡くなった旦那さんと間違えるようなこともあるらしくてさ」
志村が小杉から聞いた話をしてくれた。
「そうなの、小杉さんも大変だと思うけど、大事なお母さまだものね」
みんなにお茶を出しながら、鈴木さんがしんみりと言った。
「心臓の持病もあるらしくて、向こうでも奥さんとよく電話してたよ」
「志村、小杉が動きやすいように、母親のところに行くような時は、こっちで何とかするからいつでも言え」
志村の話を聞くと、奥で電話を終えた工藤が言った。
こっちで何とかするってことは、俺が動くってことかな?
工藤の言葉の意味を解釈して、良太は心の中で呟く。
だが、小杉のためならそれもよしだとは思っている。
「俺もいい年のオッサンで右も左もわからない新人じゃないですから、自分で動きますよ、そういう時は」
確かに志村はこのオフィスでの一番古株になるが、実際のところ、小杉は劇団時代からの仲間で、志村をあらゆる面でサポートしてきた、志村にとってはなくてはならない存在だ。
どんなにベテランになっても、特に舞台などは、小杉が傍にいてくれるだけで落ち着くと、以前志村が言っていたのを良太は思い出した。
いずれにせよ、そういう時は小杉でなければ仕方がないのだからとは思うのだが。
「俺みたい、まるっきし一匹狼は、自分だけのこと考えていればいいんで、その点楽ですけどね」
志村はさばさばとそんなことを言う。
この人も家族とかいないんだっけ。
確かシングルマザーのお母さんもだいぶ前に亡くなったとか。
この事務所はアスカや奈々以外、何かしらの厄介ごとを抱えていたりする者が多いが、志村もその一人で、母一人子一人で暮らしてきたものの、どうやら父親は別に家庭があったらしく、認知はされているが、父親が亡くなった際、そっちの家族と揉めたらしい。
その件も小田弁護士の働きで何とかおさまったらしいが、小田が工藤に対して、お前のお陰で額が後退するなどと冗談交じりに話していたその心境が、良太にもわかるような気がした。
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