すると彼女たちの声が届いたかのように、男がサングラスを取った。
「うっそ、あれ、沢村じゃない?」
二人を注目したのはラウンジにいた客だけではなかった。
明らかにプロ仕様のカメラを構えた連中が二人をしっかり撮っていた。
しばらくしてタクシーで乗り付け、慌てたようすで入ってきたのは黒のスーツを着た良太だった。
実際のところ、良太にはこんなところでこんな格好で、パーティを楽しむ余裕などどこにもなかったのだが、昨日のアスカの「いい考え」は、良太の忙しさなど何のそので強行された。
イベンター藤堂に声をかけたのが運のつき?
あっという間に、ホテルのスイートを借りての大掛かりなハロウィンパーティ開催となったわけだ。
「えと、奥のエレベーターだっけ………」
きょろきょろと見回して、良太は客室用エレベーターの方へ向かう。
その時、ポケットの携帯が鳴った。
しかも工藤専用着メロのワルキューレだ。
「あ、お疲れ様です。え、東京駅ですか? 早かったんですね」
今日は大阪から帰るとは聞いていたが、遅くなるんじゃなかったのかよ。
「あ、えっと、実は今夜ハロウィンパーティで………」
「ハロウィンパーティ? なんだそれは」
胡乱気な声が携帯の向こうから聞こえた。
「藤堂さんとか、佐々木さんとか…いや、あの、クリスマスはクリスマスで、今は……、は?」
「そんなカボチャパーティなんぞ、とっとと切り上げろ」
「かぼちゃパーティって……あ、いや、もう、早めに切り上げるつもりで……!」
ブチッと音がするように電話は切れた。
「………何だよ、いきなり切らなくっていいだろ!」
良太は携帯に向かってブツブツ文句を言う。
ちぇ、俺だって帰りたいんだよっ!
ここんとこ、あんまし話もしてなかったしさ。
でも工藤がこんな早く帰ってくるとは思わないじゃん。
三十七階にあがると、良太は指定された部屋のチャイムを押した。
「お疲れ~、良太ちゃん、仕事の方は大丈夫?」
藤堂に迎えられて中に入ると、いきなり一面に広がる夜景が目に飛び込んできた。
「ええ、まあ。遅くなりました。何かすんごいロケーションですね」
広いスイートルームでは、あちらこちらでワインやシャンパンの入ったグラスを手にゆったりと談笑しているのはスキー合宿に来ていたメンツや知り合いがほとんどだ。
昨日招集をかけたにしては、みんなコスプレに気合が入っていて、モデルや俳優陣が多いのでまたそれがサマになっている。
「遅いじゃないの、良太ちゃん!」
「……ひとみさん、結構飲んでますね?」
いきなり大御所女優である山内ひとみに後ろから抱き着かれて、良太は怪訝な顔を向けた。
「やだ、こんなの序の口よ。良太ちゃんも飲もう!」
「すみません、ひとみさん、ちょっとあっちで休みましょう」
「なによ、須永! あんた生意気!」
ひとみがマネージャーの須永に連行されていくのを苦笑しながら見ていると、「どうぞ」と浩輔にシャンパンの入ったグラスを渡された。
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