寒に入り13

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 どうやら良太と工藤、沢村は金髪碧眼にフレームレスの眼鏡をかけた男と一緒のグループのようで、先頭に研二が座り、良太、沢村、金髪男、工藤という順に席入りした。
「沢村、お前、英語しゃべれるんだろ? 隣の人何者だよ」
「英語人種じゃねぇみたいだぜ? フランス語っぽいから俺はパス」
「パスってな……」
 沢村と良太がこそこそと言い合っている時に、金髪男が工藤に話しかけたらしい。
 工藤が小声で何か説明している。
「社長、フランス語も喋れるのな。ちぇ、違いをみせつけやがって」
 また沢村が小声で言って良太の肘をつつく。
「俄かフランス語なら、俺も前にやらされたぞ」
「ほう?」
「何だよ、そのバカにしたような言い草は」
 こそこそ言い合っている二人を斜め向かいに座ったアスカが睨み付ける。
 アスカの前には祖父の幾馬、綾小路綱俊夫妻がいる。
 その時、次のグループがアスカの横に来て座った。
 沢村はあれっと思う。
「え、何で伯父さんと由樹までいるんだよ」
「伯父さん?」
「神戸の大河内親子だよ」
「え、三友産業CEO?」
「とその娘で、次期CEO」
「ひえ、カッコいい」
 良太が思わずその親子らしき二人をじっと見つめた。
 白髪の粋なジェントルマンという雰囲気の老齢の男性とどことなく沢村と面影が近いきっぱりした美人は小夜子くらいだろうか。
 と、その二人が沢村に気づいたらしく、二人してにこにことお茶目にひらひら手を振った。
 良太はそれを微笑ましく見て、あ、彰子さんの家族だ、という気がした。
 彰子は沢村の母親で、つい最近離婚して大河内姓を名乗っていた。
 沢村に聞かされていた母親像は凄く冷たい愛情のかけらもないような女性をイメージしていたが、実際、大和屋のイベントに今のパートナーと一緒に現れた彰子は、メチャ陽気な女性だった。
「ったく、あの二人、性格が酷似してる」
「楽しそうな人達じゃん」
「まあな。にしてもえらく俺の関係者の率が高くないか?」
「仕方ないだろ、どっちも財界の大物なんだから」
 沢村は眉を顰める。
 つい気にしてしまうのは、右手前方だ。
 向かいの列の先頭にあたる席に、佐々木が凛として座っている。
 良太の言ったように佐々木とはなるべく顔を合わせないようにしているつもりだが、つい、目で追ってしまう。
 佐々木の横には、京浜ホールディングスグループ浜村会長、五所乃尾理香、住吉建設の常務高橋夫妻と錚々たる顔ぶれが並んでいる。
 理香も今日は着物だ。
 良太はくっきり美人の理香は着物でも艶やかだなどと思って見た。
 と、理香と目が合うと、理香がウインクしてきたので、良太は慌てて視線を逸らす。
 檜山匠の横には川村物産の広報部長川村夫妻や三友フィナンシャルの友田、京助らがいるし、千雪は大河内正義、由樹の隣に座り、紫紀、涼と続く。
 財界の重鎮が集っているのだが、何人か知った顔がいるのは、夏の軽井沢のパーティで会ったのだと良太は思い出した。
 理香のお陰で名刺交換した人も何人かいる。
 総勢四十名ほどが五、六人ほどのグループに分かれて座ったところで、亭主である小夜子から新年の挨拶があり、炭点前が始まった。
 微かに香のかおりが漂う中、点前が終わると、一旦客は退室と言われて、良太はホッとする。
 ずっと畳の上に座り続けているのは苦行に近い。
 待合となっているリビングに戻ると良太の口からついついふうとため息が出る。

 


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