寒に入り19

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「こういう席なので無粋な話は極力控えたいところですが、今回、CMの件、佐々木さんにも快諾頂いてありがとうございます」
「あ、はあ」
 沢村は思わず仏頂面で紫紀を見た。
「あ、藤堂さん、良太ちゃんも、よろしくお願いいたします」
「はい、こちらこそぜひ、いいものになるよう頑張ります」
 いつものビジネスライクなのか素なのか区別がつかない笑顔を見せて、藤堂が言った。
「ね、良太ちゃん」
「はい、それはもう」
 良太は藤堂に頷きつつも、何か釈然としないものを感じていた。
 何で俺だけ、ちゃんづけ?
 その横では沢村が佐々木と何やらコソコソと話している。
 どのみち、週末にはどこに行くとか、そんな算段でもしているのだろう。
 ちぇ、いい気なやつめ!
 良太はチラリと沢村を見たが、佐々木の笑顔にぶつかって、思わずノックアウトされそうだった。
 ちぇ、らぶらぶじゃん。
「兄貴、鮨、向こうに用意したぜ」
 直子や洋子と一緒になって片付けを手伝っていた京助が、声をかけた。
「皆さん、少し物足りないなという方は、向こうへどうぞ。軽食をご用意しましたので」
 紫紀が言うと、俄かに歓声が上がり、皆がぞろぞろとリビングを出てテーブルのある客間の方へと移動した。
 良太はその時、工藤を探すと匠や研二と何やら話をしていた。
 匠とは映画のことだろうと思うのだが、研二と何を話しているのか、良太は気になった。
「研二さん、俳優でもいけそうですよね」
 鮨を二つの皿にいくつか取って、工藤に渡しながら良太は呟いた。
「残念ながら、演技はできないと断られた」
「え? ほんとに誘ったんですか?」
 鮨を頬張ったまま良太は目を丸くして工藤を見た。
「フン、あいつはいるだけで存在感だからな。いや、日本の文化を扱ったドキュメントを依頼されてる。佐々木先生や匠と研二、それに理香さんに声をかけたところだ」
「え、ほんとですか? それ、面白そうですね」
 だから佐々木先生と話していたのか。
 良太は納得した。
「皆さん、うんと言ってくださったんですか?」
「まあな。ほかにももっと隠れた職人が色々いるだろう。来春放映をめどに探しておけよ」
「え、は、い」
 結局俺のところにくるわけか。
 芸術に親しんでその上に今度は日本の文化に親しめってかよ。
「理香さん、工藤さんのファンだから喜んでたんじゃないですか?」
 つい、そんなことまで口にしてしまう。
「妬くな、ガキが」
 ボソリと工藤がほくそ笑む。
 フン、と皿の鮨をパクパク食べてしまうと、良太はまた鮨の他にフルーツやサラダ、ハム、チーズなどを盛り合わせた皿がバイキング風に並ぶテーブルへ向かう。
 シャンパンやワイン、冷酒などの他、コーヒーや紅茶などは藤原やその息子の公一が渡してくれる。
「沢村、直ちゃんに聞いたら、木曜、午後なら佐々木さんOKだってから、CMの打ち合わせ再来週の木曜二時にTホテルでいいか?」
「ああ、わかった」
 沢村はおざなりに答えた。
「再来週の木曜二時OK」
 藤堂にもOKをもらえたので、紫紀に伝えると「了解。他のアポは後回しにして出向くから」などと言う。
 このプロジェクトの顧問という形になっているというが、ほぼ紫紀が取り仕切っているらしい。

 


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