寒に入り20

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 東洋グループ側からは、紫紀を始め、中平広報室次長、岡林広報室長、宮下東洋商事営業第一部本部長、渡辺東洋フィナンシャル営業第一部本部長など、主要幹部が列席すると言われて、良太は心の中で溜息をつく。
 何? その顔触れ。
 紫紀が直々に沢村にオファーしたことからも、東洋グループが並々ならぬ期待を沢村に寄せているらしいことはわかる。
 いや、アディノのプロジェクトは沢村だけでは成功しなかっただろうこともわかっているはずだ。
 すなわち、佐々木というクリエイターあってこそで、そこに沢村という存在が融合して初めて成功と言えたのだ。
 メンバーの宮下東洋商事営業第一部本部長って、東洋商事のCFにいちゃもんつけた、一見優し気だけどその実、こわあいオバサンだよな。
 佐々木と藤堂と一緒に東洋商事のCFの最終確認に出向いた折、誰もがGOサイン出しているところへ、柔らかい言葉でNOを突き付けた優し気な顔を思い出した。
 っといっけね、オバサンとか思ってると、口にしちゃいそうだから気を付けないと。
 中平さんも曲者だしな。
 いやあ、何か失礼なことを言わないように沢村に釘刺しとかないと。
 あいつ、佐々木さんと仕事ができるってだけで、浮かれてるし。
「また何を一人で考え込んでいるんだ?」
 いつの間にいたのか、工藤が背後から良太に声をかけた。
「え、いや、東洋グループのCMの件ですけど……」
 紫紀から聞いた打ち合わせのメンツに、厄介そうな面々がいることを良太はかいつまんで話した。
「オブザーバーとか言ってるが、そりゃ紫紀さんがタズナを握る気満々だな。宮下? 以前本社にいた宮下か。宮島研究室のOBだ。ニューヨークから帰ってきたらしいな」
「げ、あのオバサン?」
 まさか法学部のOBとか、冗談だろお?!
「まだ五十前だぞ、確か。お前、宮下の前でうっかりそれ口にするなよ?」
 工藤がニヤニヤと揶揄する。
「やめてくださいよ、よけい、口にしそうじゃないですか。あの人、佐々木さんに回りくどい言い方でダメ出ししたんですよ」
 思い出すとちょっとあの時のムッとした感情がぶり返しそうだ。
「ニューヨーク支社でビシバシ頭角を現して、一年前第一営業部の本部長に抜擢、ニューヨークのピアニストとの間に子供一人、今は向こうのハイスクールに通ってて、日本と向こうを行き来しているらしいですよ。宮下本部長」
 いつの間にか傍に来ていた藤堂がぼそぼそと言った。
「さすが藤堂さん、どこからそんなプライベートな情報まで」
 良太もこそっと返す。
「やっぱ敵を知らないと策も立てられないからね。ちなみにピアニストとは別れてるけど、もともと彼女、結婚はしない派だそうで」
「なるほど」
 やっぱ、できる人ってのは、周りを気にしないっつうか、常識に縛られないっつうか。
「そろそろ帰るぞ、良太」
 心の中で感心しきりな良太に、工藤が声をかけたと思えば、もう紫紀や小夜子に挨拶している。
「じゃ、良太ちゃん来週、よろしく」
 帰りがけ、紫紀に念を押されて、良太は張り付いた笑いを浮かべた。
「例の親睦会の方はどうだ?」
 タクシーの中で、工藤が聞いた。

 


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