寒に入り22

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 お土産などもいっそ宅配してしまうのがいいかも知れない。
「そういえば、奈々ちゃんとこご両親が参加されるってことです」
「ほう?」
 奈々と言えば良太にとっては曰くありありで、何しろ、奈々が親に黙って映画のオーディションを受けたことがわかって、良太は当初、激怒していた父親に許しをもらうために奈々の家に日参したのだ。
 今思うと、よくやったよな、と当時の自分を思い出して感慨深くなる。
 同時に、奈々の父親は今も良太にとっては苦手な相手に振り分けられていて、正直言うとあまり会いたくはない。
 今回慰労会に参加を決めたというのも、会社がどんな内情なのかをしっかり見てやろう的な考えがあるのではと勘繰りたくもなるというものだ。
 実際、自分が奈々の父親の立場だったら、業界に入ってまだ経験も浅いような若造がやってきて、奈々をちゃんと預かります、なんていったところで、やはりそう簡単に信用できるわけがないとは思う。
 今ならもっとうまく説明できたかもしれないが、当時の良太としてはそれが精いっぱいだった。
 まあ、信用度が上がるかどうかはわからないが、お中元お歳暮に至っては、鈴木さんの意見も取り入れつつ、社員の家族には欠かしたことはない。
 いずれにしても、慰労会ではあんまり苦手意識を前面に出さないようにしないとだし、皆に楽しんでもらえるようしっかり進行役に徹しないと。
「お前はちょっと考えすぎる。肩の力を抜いとけ」
 不意にそんなことを言うと、工藤は良太の頭にポンポンと軽く手を乗せた。
「わ、かってますよ」
 急に優し気な振る舞いをされると、慣れていない良太はつい怒ったような口調で返してしまう。
 やがてタクシーは会社の前で停まった。
 工藤がカードで支払いを済ませている間に、良太はタクシーを降りた。
「うわ、さっぶ~!」
 途端にビュンビュン北風に吹き付けられて良太は肩を竦めて工藤を待った。
「四時半か、七時くらいにメシ行くぞ。それまでに猫の世話とか済ませとけよ」
「あ、はい」
 こうやって工藤と一日一緒にいられる日というのは、良太にとっては貴重な時間だ。
 心の浮き立つのを悟られまいと、返事はちょっと抑え気味ながら、良太は警備員に挨拶をすると、先にエレベーターに駆け寄ってボタンを押す。
「明日も予報で大雪みたいですよ」
 エレベーターが上がり始めると、良太は天気の話などをさりげなくふる。
「大雪って、せいぜい数センチだろうが」
「でも、東京では五センチでも積もれば大雪って天気予報では言うじゃないですか」
「気象庁は日本語の使い方を知らんのか」
 フン、と工藤は言い放つ。
「そんなこと言ってもねえ。とにかく寒いそうなんで、風邪とか引かないようにドリンク剤とかまた用意しとかないと」
 エレベーターを降りながら良太の科白を鼻で笑い、工藤は自分の部屋のドアを開けた。
 良太はチラッと工藤が部屋に入るのを見てから自分の部屋のドアを開けた。
 わらわらと駆け寄ってくる猫たちを拾い上げて、良太は猫のごはんを用意するためにキッチンに直行した。
「ちぇ、日曜っていえば、洗濯とか掃除とかいろいろやること山積みなのにさ」
 つい文句の一つも口にしてみる良太だが、七時に間に合うように洗濯と掃除をやるために時間を考えて動いている。

 


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