寒に入り24

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 最近は生意気に俺に指図なんかしやがって。
 工藤の宴会嫌いとか、年齢が上の女性にはあまり強く出られないところなどを良太は把握して、うまく立ち回っている。
 竹野に関しては他の共演者とうまくやって行けるかどうかが問題だとは思っていたが、誰かが上から目線でそんなことを言ってもおそらく竹野は反発するくらいが関の山だと思っていた。
 自分からそれをわかって変わらない限り、誰が何を言ってもどうにもならないこともあるのだ。
 それに工藤は、演技が確かなら、わざわざそんなことを言ってやるほど親切な男ではない。
 俳優としては早熟でキャリアもあるため、同年齢くらいの相手だと下手さが見えてしまうのだろう、毒を吐くから敬遠されてしまう。
 それに対して誰も何も言えないような状況を自ら作ってしまっていた。
 ところが、良太とやり取りするうちに竹野自身から変わっていき、良太の言うように角が取れたようだ。
 それは竹野自身の成長でもあるだろう。
「慰労会は何とかめどがたってきたんですけど、問題はうちの妹なんですよね~、スタジオ見学したいとかって」
 工藤は、海老の天ぷらを齧りながら重大事のように眉を顰めている良太を見やり、また笑う。
「連れてってやればいいだろうが。お前のお友達の俳優さんとかに連絡とって」
 明らかに宇都宮あたりへの当てこすりなのがわかって、良太はムッとした顔で工藤を横目に見る。
「早速明日にでも聞いてみます」
 しれっと返すと、良太は出しが絶品の揚げ出し豆腐をつつく。
 だが、宇都宮の撮影見学がOKだとしたら、亜弓だけじゃなく鈴木さんにも声をかけなくちゃ。
 温かい料理や酒で満たされたと思いきや、店を出るなり強い北風にあおられて、良太は「ひえ、さむ!」と思わず声を上げる。
 今年は例年にない寒さで、店から会社まで五分とかからないのだが、その五分で良太は身体が凍えそうになる。
 足早にエレベーターに乗り込むと、「せっかくあったまったのに!」と文句を言う。
「そういえば、明日って、東京だけじゃなくて全国的に大寒波みたいですよ。北海道も猛吹雪とかって。明後日、札幌でしたよね、撮影」
 ドラマ『カラスの城』は、あと札幌ロケと東京でのロケを残すのみになっているが、札幌ロケには工藤も同行する予定だ。
「ったく冗談じゃないな」
 飛行機が飛ばないなどということになれば、大幅に撮影が遅れる。
 そうなると、京都の『大いなる旅人』の撮影にも間に合わなくなる。
 まあ、俺がいなくても今のスタッフならうまく進められるだろうが。
 これから良太の方もドラマ『今ひとたびの』のキャスティングなんかで忙しくなるだろうし。
 エレベーターを降りると通路に細かい雨が吹き込んできた。
「もう降ってきたのかよ~」
 良太は冷たい雨を除けるべく手すりから離れて歩く。
 ドアのカギを開けた工藤は、通り過ぎて自分の部屋に向おうとした良太に、「何だ、もう用は済ませたんじゃないのか?」と声をかける。
 ちぇ、来ないとか思ってないな、このオヤジ!
 足を止めた良太は結局踵を返して、部屋に入って行く工藤の背中に続いた。

 


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