寒に入り26

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 しらっちゃけた会にならないようにと気を配った良太の考えより遥かに賑やかなものとなったのは、主に女性陣のお陰だ。
 というより、女性陣はほぼ明るくておしゃべりで賑やかで美味しい物が好きな人が集まった感じで、あっという間にあちこちで笑い声が上がっている。
 杉田さん鈴木さんは会った途端ずっとしゃべりっぱなし、小笠原の母親も超がつく賑やかさで、奈々は鈴木さんの娘まどかや、菊池の娘結衣、小杉の娘美琴ら同世代ということもあって、すぐに仲良くなったようだ。
「俺ンとこだけ、一家全員で出席ってね~」
 良太はアスカと楽し気に笑い合っている妹の亜弓や母の百合子を見ながらぼそっと言った。
「いいじゃんいいじゃん、ほんとお前ンとこって理想の家族って感じだよな」
 小笠原が言った。
「右に同意。あの両親あって、良太ちゃんありって感じだよな、うん」
 秋山まで頷いた。
 父の良一は良一でアスカの祖父幾馬と将棋の話で盛り上がっているし。
 一家揃って能天気みたいじゃん、うちって。
 ふうと大聞く溜息をつくと、良太は苦笑した。
「やっぱ、能天気な家族だよなあ」
 すると、ポンと頭に手が乗せられた。
「何だ、再確認してるのか?」
 ムッとして振り仰ぐと工藤がニヤニヤ見下ろしている。
 良太にそれぞれの家族に一言くらいはあるべきだとか言われた工藤は、不承不承、それぞれの家族に挨拶をして回っていたのだ。
 豪華な食事とおしゃべりであっという間に時間は過ぎ、慰労会は結構みんなが満足してくれたようだった。
 遠方から来てくれた杉田夫妻も認知症の母親を抱えている小杉さんも奥さんの富美さんや娘の美琴さんと参加して、笑顔が見られたし、少しでも慰労になったのならよかったと良太は思う。
 それに初対面にも拘わらず、あちらの家族からもこちらの家族からも、この慰労会で良太ちゃんは人気者だった。
 社員が良太ちゃん呼ばわりするので、みんなから結局良太ちゃんとしか呼んでもらえなかった。
「ま、いっか」
 上から下までブランドで固めた小笠原の母ゆかりなどは、良太を見て「ほんっとに可愛いわね~」を連発してくれて、アスカの失笑を買っていた。
「でもよかったわ。みんなから、良太ちゃん、良太ちゃんって慕われて」
 能天気な母がのたまうと、「そうだ、皆に可愛がられて成長するってのが一番だ」などと能天気な父も頷く。
 自分の両親ながら、保証人になった知人に夜逃げされて、工場も家も取られた上、何千万の借金を背負わされて、夜逃げ同然で熱海の温泉宿で暮らし始めた当初も、心配で電話する良太に、「今日はお風呂のお掃除の時に、お父さんたら滑って転んじゃってお湯まみれになっちゃったのよ」と言いながら笑っていた母を思い出す。
「お子さんのお誕生日にはお手製のケーキを焼いてくださるという、素敵なお母さまですね、お目にかかれて光栄です」
 秋山はそんなことを言ってまた母親を喜ばせた。
「昔はよくおやつを作ってたんですけど、熱海に移ってからしばらくはオーブンがなくて、フライパンで焼いてみたりしてたんですよ。それが最近亜弓がオーブンを買ってくれただから嬉しくて色々作ってみてるんです。あ、今度秋山さんのお誕生日にケーキ焼いてお送りしますね」
「それはありがとうございます」
 表情をあまり変えない秋山が笑顔を浮かべていた。
 


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