寒に入り28

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 そんなことを考えている良太もまた、翌日は忙しかった。
 携わっているスポーツ番組『パワスポ』の特集で、レッドスターズの新鋭、八木沼大輔を取り上げることになり、午前中はMホテルでその取材が入っていた。
 慰労会二日目は、エステや観劇、買い物など手配だけしてそれぞれ好きに過ごしてもらうのだが、良太の両親がはとバスツアーに参加するという話を聞きつけて、杉田夫妻と菊池一家や奈々の両親、奈々の両親、それに平造や昨夜の慰労会でもみんなのショットを撮っていた井上が撮影がてら一緒に同行することになり、良太は菊池にまとめ役を頼んだ。
「うちの親、何しろ能天気で」
 良太が言うと菊池は笑った。
 問題は午後三時から予定しているスタジオ見学だ。
 亜弓にせがまれる形で、良太が宇都宮に打診してみたところ、「大歓迎だよ。スタジオの方には俺から話をしとくよ」とまで言ってくれた。
 宇都宮が出演中のドラマ撮影というわけで、鈴木さんにも声をかけ、亜弓と鈴木さんは朝から上機嫌だった。
 すると小笠原の母ゆかりや小杉の娘の美琴までが一緒に行きたいと言い出した。
「悪い、俺がもし時間になっても帰らなかったら、スタジオ見学の引率、頼めるか?」
 良太はもしもの時に備えて真中に引率を頼んでおいた。
「お茶その他もろもろ、経費でケチらなくていいからよろしく」
「了解っす!」
 快く受けてくれた真中に後を頼んで、良太は朝食を慌てて取るとタクシーでMホテルに向かった。
「ウオー、久しぶりやん、良太ちゃん!」
 良太が取材に使う部屋に到着するなり、八木沼はがしっとハグして離れない。
「お久しぶりです、今日も超元気ですね」
 ようやく話してもらって息も絶え絶えに良太は苦笑いした。
 昨年の十二月から、八木沼は関西タイガースの人気スラッガー沢村智弘と一緒に、都内にある大手アパレルメーカー株式会社ONOの施設を利用して既に自主トレに入っていた。
 大阪出身の八木沼は高校時代はさほど注目されていたわけではなかったが、京都のR大に進学し、関西の大学リーグでは大柄で豪快なスイングから第二の沢村として注目されることとなった。
 そしてレッドスターズにドラフト一位で入団したその年には、即頭角を現し、三年目の昨年は三割を打つ活躍をみせ、さらに大阪弁を話すハーフでイケメン、なのにひょうきんな人柄で一躍人気者となった。
 昨年は交流戦の際、あまり他の選手と付き合いもない沢村が何故か八木沼とはよくしゃべり、さらに二人ともがいいパフォーマンスを見せ、その様子がSNSで拡散されたのを機に、『パワスポ』では一度セパの大型スラッガーである二人にインタビューし、その模様は特番で放映され、夜のスポーツ番組にしては視聴率を取った。
 シーズンが終わってみれば二人ともに活躍し、成績を残した年となっただけでなく、アディノのCMで新たな人気を得た沢村の後を追うように、CMのオファーも舞い込み、今後さらなる飛躍を期待される八木沼にスポットを当てるというわけだ。
 髪は短めのドレッドヘア、肌はアフリカ系アメリカ人を母に持つので浅黒いが日に焼けた選手たちとさほど変わらない色合いで、目鼻立ちは欧州系という、本人にきいた限りでは、父母それぞれ様々な人種が混じり合って複雑なルーツを持っているらしい。

 


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