端の方に設置しておいた炬燵は、いつの間にか良太が真ん中に持って来て、このありさまだ。
「撮影、終わったんですか?」
寿司折を二つ空にして、ゴクゴクと缶ビールを飲んでから、良太は工藤に聞いた。
「じゃなきゃ、のんびり寿司屋なんぞにいかねえよ」
フッとほくそ笑み、工藤は「川岸さんには脱帽だ」と続けた。
「撮り直しカット、ほぼ終了した。足を向けて寝られないな」
「すごい集中力ですね、川岸さん!」
「短い時間でもいかにやり遂げるかってのを体現してくれるからな、ああいうベテランになると」
炬燵なるものは、工藤にとってはドラマや映画の小道具であり、自分の生活には何ら関係のないシロモノだった。
良太がここで使っているのを見るまでは。
さらに宇都宮が炬燵で鍋、を主張するまでは、自分が炬燵に足を突っ込むことなど工藤は想像もしていなかった。
確かに、足が温まるとリラックスして良太が寝てしまうのも頷ける。
「珍しく炬燵に入ってるし」
ようやく良太は気づいた。
「しかし、二人も足を突っ込んでいれば、中は足で一杯になるだろうが」
ちぇ、足の長さを強調してくださるし。
良太は上目遣いに工藤をみると、「この炬燵は俺一人用で小さいんです」と言い訳した。
フン、と工藤は鼻で笑い、缶ビールを飲み干した。
ここ数日、工藤の睡眠時間は二時間もあればいい方だったし、割と酒も入っている。
絨毯の上に寝転がれば、なるほど良太でなくても心地よく眠ってしまいそうになる。
「コート、皴になる。上着も」
良太は放り出したコートやそのまま絨毯の上に寝そべっている工藤を見て、さすがに疲労の極致なんだろうと思いやる。
手の離せない仕事の合間に、会社の慰労会に顔を出せとは良太が言ったのだが、工藤は不承不承だがなんとか体裁を保って、社員の家族に挨拶して回ったりしたのだ。
仕事でのトラブルはありが前提とはいえ、事故や病気などで突発的なキャストの変更などはかなりな面倒ごとになる。
まあ、今回の件で多少なりとも工藤の役に立ったことは、良太としては密かに嬉しかったりしたのだが。
良太は仕方なく炬燵から這い出すと、工藤のコートをドアの横のハンガーラックにかけた。
スーツなど脱いだあとや朝すぐに着られるようにと最近買って重宝しているアイアンフレームのラックだ。
このまま絨毯の上に置いたままにしたものなら、炬燵掛けの上で眠っている猫たちが喜んで丸くなりそうな手触りだ。
上着はもう猫の毛がついているだろうから、コロコロでとらなきゃな、などと良太が思っていると、工藤がむくりと身体を起こした。
「それ、スーツ、猫の毛取らないと」
工藤はネクタイをグイと緩めてから上着を脱いだ。
良太はハンガーラックにかけてから、コロコロで猫の毛を取った。
「んなもん、適当でいいぞ。クリーニングに出すし」
「でもある程度取っておかないとさ」
良太は意地になってコロコロで上着の猫の毛を取る。
「炬燵に足突っ込んだらズボンも猫の毛だらけじゃね?」
「だからクリーニングに出すって言ってるだろ」
「だけど」
と振り向いた良太の腕を工藤は引いた。
「うわっ、わっ! ちょ!」
バランスを崩した良太は工藤の膝の上に尻もちをついた。
「何すんだよっ!」
「だからもういいって良太ちゃん」
「何が良太ちゃんだよっ…………」
抗議しようとした口を工藤のエロいキスが襲う。
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