寒に入り6

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 そういえばあの横柄スラッガーも、年末にかおりらと飲んだ時、披露宴に呼ばれたことがないから、是非呼んでくれなどとほざいていた。
 まあ、俺に何でも相談室をやらせるくらいだから、本音が言い合えるような相手というのはやはりいないんだろう。
「お、何かさり気に、いいカフスしてんじゃん」
 頬杖をついていた良太は、いきなり小笠原に指摘されて、隠すように腕を降ろした。
「珍しくクールじゃないかよ、良太にしては」
「うっさいな、能とか高尚なもん観る時くらい俺でもこのくらい………」
「ふーん」
 何やら意味ありげに小笠原は良太を見つめる。
「それ、最新のデザインだろ? ひょっとしてプレゼントとか?」
「は? 知るかよ、そんなの」
 もろに言い当てられて少し動揺した良太は、慌ててビールを飲み干した。
 誕生日には腕時計などもらったことはあるのだが、このカフスはクリスマスやバレンタインなど製菓会社の陰謀だくらいにしか思っていないオヤジが、珍しくも年末のクリスマスにくれたのだ。
 良太の方も、お中元とお歳暮として毎年夏と暮れには工藤の行きつけである前田のバーにボトルを入れているのだが、夏の工藤の誕生日とかクリスマスプレゼント、なんてことは口にしたためしがない。
 去年のバレンタインには、あまりにみんなプレゼント合戦に夢中なので、つい、良太ものっかって、日頃のご厚情に感謝して、サングラスなんかを工藤にプレゼントしてしまったのだが。
 とにかくせっかくもらったカフスを着けていくような機会がなく、年明けのイベントは茶の湯などもあったため、アクセなどつけては行けなかったし、明後日の初釜も同様だ。
 だから、せっかく謡初めの匠の舞台だからと、スーツもそれなりのものを着て、カフスもつけてみたのだ。
「ちぇ、いいよなあ、みんな。クリスマスにプレゼントしてくれるような相手がいてさ」
 小笠原はしっかり見通している口ぶりで、羨ましそうに言った。
「真中のヤツなんかも、クリスマスもちゃっかり彼女とデートだぜ? 俺というモノがありながら」
 昨年、ちょうど小笠原が映画のロケで南の離島に割と長く滞在しているうちに、当時つき合っていた彼女に新しい彼氏ができてフラれたのだ。
 その自棄酒に付き合ったのも良太だったが。
 誰かと付き合うにしても、人気俳優でもやはりドラマや仕事で知り合うくらいしかそうそう出会いの場などもないらしく、飲み友達もなかなかできない、マジな彼女もなかなかできないという状況が続いているらしい。
 マネージャーの真中は、逆に小笠原がフラれた頃から高校の時の同級生と付き合い始めて、順調のようだ。
 今度計画しているのは、社員の家族を招いての慰労会のようなものだが、そういえば真中や軽井沢の平造には家族がいないのだと、良太は改めて思う。
「杉田さんも呼ぼうかなあ」
 軽井沢で思い出したのが、平造がいない時など、別荘へ手伝いにきてくれる家政婦で、工藤家とは長い付き合いのようだ。
 夏に工藤と軽井沢に行った時もしっかり世話になった。
「ああ、軽井沢の? いんじゃね? 喜ぶだろ」
「だよな、声かけてみよ」
 家族がいないといえば、秋山も長野の実家とは絶縁状態だというから、こちらも家族はナシということになる。

 


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