「ちょ、待てよ! 不謹慎だろ!」
「うるさいやつだな、それはそれ、これはこれだろ」
工藤は良太の抵抗など意に介しない。
「何、ヘリクツ言ってんだよ!」
「慰めてくれるんじゃないのか?」
「エロオヤジなんか慰めるつもりはない!」
「とか何とか、こっちはしっかりその気じゃないか」
ニヤニヤ笑いながら、オヤジの指はエロい続きを始めた。
「バッカ……やろ」
悪態をつく良太だが、工藤の唇や舌に責められて容易く息があがる。
そのうちくるりと裏返され、あれよと言う間に押し入られて、「この! エロ…オヤジ! やっ! あ………!」と良太はそのつもりはなくても勝手に声が出てしまう。
ベッドに連れて行かれてまたエロいキスをされたことまでは覚えているが、やがて良太は意識を手離した。
翌朝、良太は工藤のベッドでひとり目を覚ました。
工藤は出かけた後だった。
「ま………いっか」
ちょっとでも工藤の慰めになったのなら。
「カラスの城の撮影だっけ」
工藤の話によると政治家と癒着した警察内部の不正を暴く刑事が主人公のドラマだ。
主に警察組織を扱った社会派小説で人気の上杉耀原作で、三月後半二週に渡って放映予定となっている。
工藤の先輩になるチーフプロデューサー紺野から声をかけられた仕事で、紺野は硬派だが、工藤に対して出自がどうのということを全く問題にしないで公平な目で見てくれる男だったという。
おそらく今日、紺野は大野の葬式に出ているはずなので、早めに行くと、昨夜工藤が言っていた。
午後からパワスポの取材に同行する予定だが、良太はとにかくそれまでの時間をフル活用して、たまっている洗濯と掃除を片付けることにした。
ベッドを降りた良太は、まず、シーツを引っぺがした。
明日の日曜日は例によって綾小路家の初釜で、これには工藤と良太二人が出席することになっている。
「明日持ってくもの、用意しとかないとな」
あれやこれやといつも以上に慌ただしい年明けだ。
そういえば、工藤ってあんな顔してて達筆なんだよな。
聞いたらみんな驚くだろうが、お習字だけは曾祖母に子供の頃からたたき込まれたと言っていた。
だからご祝儀やそれこそ不祝儀袋なんかにも筆ペンでささっと書くのだ。
「それだけは俺にはかなわないなあ」
洗濯物を洗濯機に放り込みながら、良太は呟いた。
それだけだと? と工藤が聞いていたら突っ込みが入るところだろうが。
もちろん、鈴木さんも筆達者だから、何かの時は鈴木さんに頼っている。
「お習字とか、元気がいいですね、とかって褒められたことはあるけどさ」
良太の場合、小学校の先生の評価は絵でもお習字でも、よくできました、ではなく、よく頑張りました、というのが多かった。
良太は褒められたと思って得意げに家に帰って母親に報告すると、母親はよかったわね、と喜んでくれたのだが、小学校高学年になった頃、妹の亜弓が言った。
「バッカみたい。よく頑張りましたとよくできました、じゃ、意味が全然違うのよ。ただの努力賞じゃない」
「先生は褒めてくれたんだぞ」
「努力賞は褒めたのとは違うわよ」
違う、違わないで喧嘩になって母親に止められたりした。
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