霞に月の10

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 すると対して時間を空けずやってきたのは沢村と佐々木、それに佐々木のアシスタント池山直子だった。
「こんばんは~、良太ちゃん、お疲れ様」
 直子はいつものように黒のレース地のドレスでにっこり笑った。
 華奢とはいえ、ほっそりとしたピンヒールを見ると、よくこんな靴で動けるよな、と良太は感心する。
「焼酎と冷酒、俺のお勧めです」
 鈴木さんに沢村は酒を渡し、佐々木はパティシェリーの袋を差し出した。
「すみません、プリンなので冷蔵庫に入れていただけると」
「あ、俺、上の冷蔵庫に入れてきます」
 すかさず隣に立っていた森村が申し出て足取りも軽く階段を上がって行く。
「おう、良太、せっかくフロリダまで来てたのに、走り回ってて俺のインタビューとかもやらねーでとっとと帰っちまうし」
「俺がインタビューするわけじゃないし、忙しかったんだよ。何にせよ、おめでとう」
WBCの取材でフロリダに行ったものの、良太は確かに走り回っていて、沢村を見かけたくらいで帰国した良太は、本人にようやく言うことができた。
 沢村と佐々木は何だか今日は穏やかで、二人静かに桜を見あげている。
「あ、可愛い、タイバー」
 目ざとい直子が声を上げた。
「そっか、誕プレ? 工藤さんからだね~」
 また笑いでごまかそうとした良太に、直子はこそっと囁いて、裏庭に出て行った。
 参ったな~、アスカさんといい直ちゃんといい、目ざと過ぎるし。
 それから少し間が空いたと思ったら、宇都宮と坂口を筆頭に、小笠原と今付き合っているモデルで俳優の美亜のカップル、加藤ら『猫の手』軍団がぞろぞろとやってきた。
 さらに研二、辻、三田村ら千雪の同級生三人と能楽師の檜山匠に続いて竹野紗英が現れた。
「紗英さん、いらっしゃい。肉まんのデリバリーありがとうございました」
 良太はラフに可愛いブラウスとデニムでやってきた紗英に礼を言った。
「うわ、ほんと、綺麗! 来てよかった!」
 紗英は早速花に引き寄せられるように歩いて行く。
 声を掛けたので良太の同級生肇や今はそのフィアンセであるかおりも顔を見せてくれた。
「沢村も来てるよ」
「おお、WBCすごかったよな」
 少し興奮気味に言う肇は、やっぱり昔からの野球少年だ。
「あら、良太くん、そのタイバー、誰にもらったの?」
 かおりが言った。
 やたら気が付く女子が多くて良太もごまかすのに苦労する。
「お、今年も盛況だな」
 ちょうどその時、志村嘉人とマネージャーの小杉、南澤奈々と谷川、それに小笠原のマネージャーの真中も会社の前で出くわしたと言いながらやってきたので良太は助かったと思いつつ、「お疲れ様です」と出迎えた。
「何か手伝いますか?」
 真中が良太に声を掛けた。
「ああ、平気平気。今はオフなんだから楽しんで」
 小笠原のマネージャーとして数年、真中もようやくそれらしくなってきたし、小笠原の取り扱い方も習得したようだ。

 


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