霞に月の11

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 裏庭に集うメンツを見ると、京助と千雪以外ほぼ来ているらしいと良太は確認した。
 あとはうちの社長か。
「鈴木さん、モリーもほぼお客さん揃ったし、向こうに行ってください。俺、あと千雪さん待ってますから」
 二人に裏庭に行ってもらい、良太は表の方に目をやった。
 ややあってタクシーが停まると、京助と千雪が降り立つのが見えた。
「いらっしゃい」
「何や、賑やかそうやな」
 千雪が裏を窺った。
「花見じゃなくて、飲みたいだけだろ」
 そう言いながら、京助はワイン二本といつもの手作りパイだろう包みを二つ差し出した。
「キッシュとベリーのパイだ」
「わ、ありがとうございます」
 こういう時は普段横柄で見下してくる京助の存在を良太もありがたく思う。
「帰り、タクシー会社に数台お願いしているんで、声かけてください」
「すっかり定着したイベントになってもうたな」
 千雪は笑って裏庭へと向かう。
 二人が裏庭に出て行くと、良太はまた表を見た。
「やっぱ、間に合わなかったのかな、工藤」
 仕事だから仕方がないが、まだやはり桜にはわだかまりがあるのだろうかと良太は工藤を思いやる。
 無論、愛していた相手が亡くなったりしたら、到底忘れられるものではないだろうが、去年はたまたまか、軽井沢の別荘に咲く花を見ることができたのに。
「良太、工藤さん、まだ?」
 裏庭からやってきたのはアスカだ。
「うーん、今夜は無理なのかも」
 良太が諦め顔で呟くと、アスカが「宴会やってるうちに顔出すかもよ? ほら、良太も行こ?」と促した。
「そうですね」
 良太は頷いた。
「それより、紗英が、ユキのことで大騒ぎで」
「ええ?」
 やっぱり、と思いながら良太はアスカの後から裏庭に出て行った。
「ウッソ! やっぱ、信じられない~! ほんとにほんとに小林センセ?」
 どうやら千雪の同級生、辻や三田村、研二らが千雪と乾杯している時に、紗英がおや、と思ったらしい。
 さらにみんなが千雪さん、と呼ぶので紗英が千雪に直接聞きただしたようだ。
「何で~??? ウッソ、こんなのサギだわ~!」
 文句もどこかしら嬉し気に喚く紗英に、三田村らが千雪がいつもの出で立ちを勘案した理由を面白おかしく話して聞かせている。
 かと思うと、かおりが血相を変えて良太のところにやってきて、エントランスへのドアの方へ引っ張って行く。
「何、どうしたんだよ?」
「ちょっと、まさかだと思うけど、沢村っちの付き合ってるのって、佐々木さんとか言わないよね? アスカさんとか騒がれてたけど?」
 そうだった、去年のスキー合宿の時、沢村がみんなの前で佐々木にキスした時、かおりと肇はその場にいなかったし、誰もそんなことを二人に説明したりもしなかった。
「うーん、沢村に聞いてみなよ」
 良太は勝手に話すわけにもいかないだろうと、そう返事をした。
「そっか。てっきり良太とデキてると思ってたのに」
 そっちかよ。
「じゃ、そのタイバー、誰にもらったの?」
 かおりは良太への追及をやめたわけではないらしい。
「こんな小さい裏庭に、どんだけ集ってるんだ?」
 聞き覚えのある声に振り返ると、相変わらず苦々し気な顔で工藤が立っていた。


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