「あ、お疲れ様です! よかった、間に合ったんですね、さ、早く早く」
パッと良太の表情が明るくなる。
「おい、良太」
良太は工藤の背中を押すように工藤を裏庭へと促した。
「あらら……」
一人ドアの向こうで取り残されたかおりはぽつりと呟いた。
「ウッソ、まさか、ね」
工藤が裏庭に顔を出すと、「おう、社長、先にやっとるぞ」と下柳がグラスを掲げた。
「せっかく楽しい宴なのに、やっぱり仏頂面」
ひとみが追従する。
「よお、おっせえぞお、くどお! 早くこっち来い」
坂口が大きな声で呼んだ。
「まったく、もう出来上がってるんですか」
坂口のところにやってきた工藤もさすがに呆れた顔をする。
いや、まったく。
工藤は裏庭で確かに楽し気に集って、いや飲んでいる面々を見回すと、苦笑いを禁じ得ない。
この会社を興した頃は、こんな状況を予想すらしていなかった。
初めて会社の慰労会なるものをやった時にも思ったものだが、自分の周りに人が集まってきていることが不思議なくらいだった。
いや、俺の周りではない、良太だ。
ここにいるメンツも知り合いばかりだが、ひとみや下柳、坂口などの他は、やはり良太が集めたようなものだろう。
「ビールでいいですか」
早速良太がビールの入ったグラスを工藤に持ってくる。
「ほんじゃ、かんぱーい!」
坂口が勝手に工藤のグラスに自分のグラスをぶつける。
「お疲れ様です」
傍らにいた宇都宮が爽やかな笑顔でグラスを掲げるし、「おっつかれさまでーす!」とやってきた小笠原も、勝手にグラスをぶつけて通り過ぎる。
小笠原は美亜と今のところ順調に付き合っているようだ。
美亜の笑顔を見ればそのくらいはわかる。
千雪は紗英にまだ質問攻めにあっていて、苦笑を浮かべている。
「よかった、工藤さん来ないと、良太がぶすくれて、宴会がしんみりしちゃうとこだったわよ」
そんな文句を言ってくるアスカももう結構飲んでいるようだ。
「お疲れ様です。間に合ったんですね。藤田さん、よく帰してくれましたね」
今度は秋山が工藤のところにやって来て言った。
「二軒目に向かうところで抜けてきた。付き合ってたら朝までだ。秋に、志村でCMやる」
「ああ、また、北欧とかですか?」
「そうだな。アスカ、あんまり飲ませるなよ? 明日はオフじゃないだろ」
「そうですね。まあ、楽しみにしていた花見ですから、ほどほどに」
秋山は笑う。
「ようやく飲んでるし。良太ちゃん、工藤さん来るまで一口も口にしてなかったんですよ」
それから万里子や志村、小杉や谷川や奈々がやってきて声をかける。
奈々がシャンパンを飲んでいるのを見て、高校生だった奈々もすっかり大人になったことをあらためて思い知る。
「お疲れ様です」
鈴木さんもみんなが立ち去った後にやってきた。
「お疲れ様です、いろいろとご面倒をお掛けします」
「いえいえ、何だか、家族がどっと増えたような感じで、楽しくて」
鈴木さんはホホホと笑いながら花を見上げた。
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