霞に月の107

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 そういえば、和菓子処『やさか』のスタッフも、しゃきっとした面子がそろっているが、あそこはオーナーが持っているモデルクラブのモデルがアルバイトをしているからだ。
「え、広瀬さんなら、全然ここいけそうじゃないですか」
「いや、無理無理。それに俺、しゃっちょこばった仕事って、ダメそうだし」
「そうかな。俺、やったなあ、ちょい役でこういう店のスタッフとか、いろいろ」
「天野さんなら、どんな役でもはまりそうですよ」
 あまり口に出して持ち上げるのもどうかと良太は思うが、天野は既に居るだけでオーラを感じる。
 『やさか』の研二とどこか似た、それこそ重厚な存在感がある。
 おそらくそれはルックスがどれほどよくても太刀打ちできない積み重ねてきた実力によるものだ。
「これ、ウマっ!」
 シチュウに取り掛かった良太は思わず口にした。
 添えてあるバケットもまた絶妙だ。
「グルメな篠崎さんが太鼓判押すわけだな」
 天野も良太もしばし食べることに専念した。
 食べ終わってビールを飲みほしたところで、「やっぱ、こういうところでがっついてビールって、小僧っ子か」と天野が笑う。
「いやだって、美味いんですから」
 良太も「でも久々美味い食事しました」と笑った。
「ここんとこ、撮影でロケ弁くらいしか食べてなくて。美味しいお弁当選んでるんですけど、やっぱ冷えちゃうとね」
「今、何の撮影ですか?」
「ドキュメンタリーです。土曜の午後、三十分番組で、『和をつなぐ』っていう」
「見ましたよ、一回目。茶道の先生の、あの方、男性なんですよね?」
 良太はちょっと吹き出しそうになる。
 確かに佐々木を見るとどうしても戸惑うだろう。
「そう、あの方、異様にきれいだし、よく間違われるんですけど」
「いや、佐々木周平って名前があったけど、やっぱりあの人なんだ」
「いたって普通に男性なんですけどね、話すと。それに茶道の先生ってだけじゃなく、天才クリエイターが本業っていうか。そのうち天野さんもCMの仕事とかで会うことあるかも知れないですよ」
「へえ、そうなんだ」
 腹ごしらえが済むと天野はシングルモルトをロックで、良太はウォッカソーダをオーダーした。
「それで大事なタイバーって、やっぱ、彼女さんにもらったの?」
 いきなりの突っ込みに、グラスを傾けていた良太はむせそうになった。
「あ、いや、そんなんじゃないんだけど、見つけてくれてありがとうございました。なんていうか、義理でいただいたやつだから、仕事でたまにつけていかないと」
 そうだよな。
 義理ってやつなんだよな、きっと。
 俺がお中元やお歳暮やってるから。
 そういえば、ここんとこワルキューレも鳴らないや。
「なるほど、仕事絡みだと失くしたりできないですね」
「そうなんですよ」
 良太は苦笑した。

 


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