霞に月の120

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「ひよわそうなやつが来て、なーんだって思ったとか?」
 良太は茶化して言う。
「とんでもないです~、いや、最初、広瀬さんみて、また新人が来たのかって思ったけど」
「そうそう」
 慌ててそんなことを言う阿川らに、森村がクックッと笑う。
「お前、その笑い方失礼だぞ!」
 良太は森村に突っかかる。
「いや俺も、良太さんに初めて会った時、学生バイトかなと思ったから」
「よけい腹立つだろ、どうせ俺はガキっぽいさ」
 不貞腐れ気味に言う良太に、みんなが笑った。
「何だよ、モリーだって人のこと言えないだろうが」
 良太が森村をちょっと睨みつけると、森村はハハハッと笑ってごまかす。
 結局のところ、俺ってガキで軽く見られるってことじゃんね。
 それってやっぱどんなに虚勢張っても信用されないってことだよな。
 モリーは、元シールズっていう実績と鍛えられた心身があって、いざという時は別人だもんな。
 俺なんて、最近ジムも行ってないし、筋肉も落ちたし、あの時、二村のことだって、クールだなんだと言われても、工藤っていうバックがあるからこそで、俺一人じゃ何もできやしない。
 そこんとこが、工藤にも信頼されてないとこなんだよな。
 自分にイラついた良太は残っていたジョッキのビールを飲みほした。
「俺、焼酎行きますけど、良太さんは?」
 何だか最近充実して頼もしくさえ見える森村が聞いた。
「うん、じゃ、俺も」
 ま、今更か。
 所詮、俺なんか、こんなもんさ。
 後ろのテーブルにいる工藤に意識を向けていたところで、どうにもならないわけで。
「カンパーイ」
 無暗に笑みを浮かべ、良太は目の前に置かれたグラスを森村と合わせると、ゴクゴクと半分程飲み干した。
 ちょうど良太の背中が斜め前方に見えていた工藤は、あのバカ、調子に乗って飲みやがって、と険しい目を向けた。
 坂口の御託を受け流している工藤にも、時折前のテーブルにいる若い連中の話が聞こえてきた。
 二村の話などとうに忘れていたが、ちょうど工藤が現場を離れていた時のことで、あの時は良太にそれこそ丸投げしていた。
 ニューヨークの工藤に二村のことを相談したかったのだろう良太が電話をしてきた時も、お前に任せると言っただけで突き放してしまった。
 結果、工藤がいなくても良太はしっかり動いてことを収めたわけで、工藤としては、良太が未だに工藤がいないとダメだ的な考えを改めろと言いたいところだが、やはり自分で気づけよ、と思うのだ。
 ひとみの言うようにちゃんと言葉で言わないとわからない、それは確かにそうだろう。
 雄弁でないのは不親切なのかもしれないが、工藤が何も言わなくても良太はきちんと自分で考えて動けるのがわかっているからだ。
 誰でも良太に対してのようなやり方でできるわけではない。
 良太だからだいうことが、何でわからないのか。
 フン、それが言葉足らずだと、ひとみらは言いたいのだろう。
 やはりとにかく、良太と話をしないとってことか。
 工藤は苦々しい顔でグラスを空けた。

 


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