霞に月の17

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 キスくらい幾度もしているけれど、良太は未だにこれ現実だよなとか、疑ってしまう。
 一度離れたあとまたすぐに口づけられて、良太は少し震えた。
 何だよ、まるで恋人のキスみたいじゃん。
 キスは次第に深くなり、目を閉じた良太の脳内は次第に白濁していく。
 唇が離れて良太は目を開けた。
「どうした? 妙に静かじゃないか。いつもぎゃあすかうるさいくせに」
 笑みを浮かべながら工藤はからかうように言う。
「うっさいよ!」
「ここじゃ、なんだから、ベッドに行くか? な?」
 工藤は照れ隠しに喚く良太の頭を掻きまわす。
 いつもなら、何が、な、だよ、云々追加で喚くところだが、良太は黙ってベッドまで手を引かれていく。
「おいおい、静か過ぎると調子が狂うぞ?」
 良太をベッドに押し付けた工藤が笑う。
「何だよ、せっかく、タイバーの礼にとか思ったのに」
 ちょっと上目遣いに工藤を見やる良太を見下ろして、フンと鼻で笑い、工藤はバスローブを脱いだ。
 クッソ! サギだよな、このオヤジ。
 先月、良太だけでなくまさしく鬼の攪乱で工藤まで風邪を引いたことで鍛え直せとばかり、高輪の工藤のマンションに入っているジムに週一で通えと工藤から言い渡された良太は、専属トレーナーの野中のアドバイスを受けながらなんとかそのノルマをクリアしてきた。
 工藤も当然利用しているのだろうが、何だよこの差は、と思うくらい大胸筋などバキバキに仕上がっている。
 そんなことを考えている間に、良太は工藤の大胸筋に押しつぶされそうになりながら、あちこち触りまくられるたびごとに、あ、だの、や、だのと無意識に声を上げる。
 なんか、工藤の自宅は高輪なわけで、やっぱ完全に俺って社長の別宅のアイジンってやつじゃん?
 海老原さんが結婚とか意外過ぎるけど、それもありなんだ。
 でも絶対俺とこのオヤジとじゃ、結婚のけの字も程遠いし、あり得ない。
 俺でもそういうんじゃないと思うけど、でも、アイジンはやだなあ。
 またぞろブツブツと脳内で呟いていた良太だが、工藤に入り込まれた途端、良太の身体が仰け反った。
 でもやっぱ、工藤、好きだからしょーがないし。
 今までにも何度も繰り返した自分の呟きに身体が勝手に反応して足元からジワリと溶け始め、ブツリと脳内の思考が遮断される。
 脳髄まで甘ったるい感覚が占領すると良太はあっという間に追い上げられた。
「良太」
 耳朶に直接響く工藤の声がさらに良太の身体を戦慄かせた。

 


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