「うーん、それって、表向きはってことだよね?」
すると千雪は少し眉を寄せる。
「まあ、二人とも頑なやし、特に工藤さん。出自があれやからってのはわからないでもないけど、いくら何でもって思うし、この辺で何か起爆剤になるようなことがあれば、や、この際、二人とも別の誰かと付き合うてみたら、何が大事かはっきり見えてくるんやないかて」
千雪の発言に、藤堂は、「なるほど、そういうことか」と頷いた。
「うちの研究室の佐久間も、昔付き合うてた編集の彼女と一旦別れて別の相手としばらく付き合うてたんやけど、結局合わなんだらしうて別れて、最近、前の彼女とより戻したみたいで」
身近な例を持ち出して千雪は続けた。
「まあ相手はでキャリア積んで副編集長になるのに、自分がまだ食えない研究員だってことに悩んでたんやけど、先輩が地元の検察に行ったんで助教のポストが空いてこの春佐久間も助教になるからて」
「おや、じゃ、千雪くんと同じポストに?」
「あ、俺もポストが空いたんで四月から准教授に」
千雪がさらりと言った。
「おやおや、それはおめでとうございます。良太ちゃんも喜んでたでしょう?」
「あ、良太に言うの忘れてもた」
藤堂に言われて千雪は思い出した。
「ま、そんなことはどうでもええけど、良太も入社以来工藤さん一筋やからな、ちょっと他に目を向けてもええんやないかと思うけど」
「いやいや、どうでもいいことじゃないが、あの良太ちゃんが他に目を向けるって、ちょっと考えられない気がするが」
藤堂は今から懐疑的な言い方をする。
「まあ、あの性格やからなあ。とはいえ、合コン作戦はやってみてもええ思う」
「そうだね、やらないよりは、だね」
「何か、消極的な賛同ですね」
すると藤堂は腕組みをして、うーん、と唸る。
「やらないよりは、とは思うんだけどね。やって、良太ちゃんが万が一傷つくようなことにならなければいいなと」
それを聞くと千雪は「藤堂さん、優しいんやね」と笑みを浮かべる。
「でも、このまま膠着状態が続くと、良太が疲れてまう思うし、もしかして別れた方が正解、いうこともあるかしれんし」
「そうだね。でも、もし、良太ちゃんが工藤さんと別れるってことになったら、おそらく会社も辞めるだろうし、会社は痛手だな」
「会社より良太が大事違います?」
藤堂の言い分に反論するように千雪が断言する。
「確かに」
「良太の決断に任せて、良太を手離すことになったとしても、それは工藤さんの自業自得や」
「厳しいね」
「そうかて、良太を中途半端に手元に置いとる煮え切らない工藤さんが悪い思いませんか?」
「まあねえ、年を取ると、優柔不断にもなるんだよねえ」
ちょっと工藤の肩を持つように藤堂は工藤を糾弾する千雪に苦笑する。
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