霞に月の40

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 お仕着せを着たギャルソン風の青年がトレーに飲み物を掲げて二人の前にやってきた。
 二人ともシャンパンをもらい、奥には軽食やつまみが用意されているとギャルソン風に説明を受けて、腹が減っていたのを思い出した良太と森村はそちらの方に向かう。
 が、すぐに理香に声をかけられて二人は振り返った。
「あら、可愛いわね、今日はモリーもシャキッとしちゃって」
 大きく胸元が空いたホルターネックの黒のドレスはシンプルなだけ、理香の美貌を強調している。
「理香さん、今夜もおきれいです」
 そんな科白をさらりと言う時、森村がシャイな日本人とは違うと良太は思う。
「あら、ありがとう」
 理香の隣にいる一緒にスキーに行った友田や、昨年の夏のパーティで紹介された浜村と軽く挨拶をする。
 その時、理香の後ろで京助や千雪とともに速水が話している二人の女性に良太は目をやった。
 くせのある黒髪、モデル並みに背が高いその女性はそう若くはないと思われたが、自然体なくっきり美人で、笑顔が明るかった。
 胸元の大きく空いたモスグリーンのカクテルドレスがボディラインの美しさを強調している。
 もう一人もサーモンピンクのカクテルドレスだが、こちらはノースリーブでもフレアスカートで、肩にかからないくらいの赤毛を外巻きにカールして可愛らしい雰囲気だ。
「あ、良太、モリー」
 二人を見つけた千雪が手招きした。
「青山プロダクションの広瀬良太くんと森村繁久くんです。こちらは法医学の香坂准教授と宮島教室の小野寺ソフィさん」
 千雪が二人を紹介すると、「あらあ、可愛いわね、二人とも。よろしくね。プロダクションってことはテレビとか?」と早速香坂准教授がニコニコ手を差し出した。
「はい、番組制作とか俳優のマネージメントなどやっております」
「俺の作品を映画化してくれた会社です」
 良太があたりさわりのない答えを返しながら名刺を二人に差し出すと、千雪がそう付け加えた。
 森村も慌ててポケットから名刺を取り出して二人に渡す。
「あ、ひょっとして、『大いなる旅人』と関係ある?」
 欧米人の顔をしたソフィが、ごく普通の女子高生のように声高に聞いた。
「よくご存じですね」
「きゃあ、ウソ、すごい! あたし、あの人、檜山匠、テレビでチラッと見ただけでもう胸がキュンってなっちゃって。檜山匠って会えたりします?」
 ああ、やっぱり匠、かなり拡散してるぞ、と良太は心の中で頷いた。
「いや、そんなには……」
 良太は適当にごまかした。
「ですよね~」
 これは本人が現れたら、ちょっとなあ。
「良太は、戸塚ゼミやったんや」
 千雪が補足すると、「え、戸塚教授のとこですか? うっわ、きっつう。ちゃんと卒業できてるってことがすごいかも」とソフィは思い切り気の毒そうに良太を見た。


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