「ハハ、かなりギリでした。俺、野球ばっかやってたし」
そういえば戸塚教授、めちゃくちゃ厳しかったけど、みんなが言う程嫌いじゃなかったな。
そんなことを考えていた良太に、奥の方で直子がひらひらと手を振った。
「あ、知り合いが呼んでるみたいで、ちょっと失礼します」
そっか、あの人が、千雪さんが工藤に紹介しようとしてる人か。
納得。
理知的美人、しかも物言いがはっきりしてる。
確かちゆきさんもそういうタイプだったとか、小田先生、言ってたような。
案外、すんなり上手く行ったりして。
心の中でそう言いつつ、良太はグサグサと胸に何かが刺さるような痛みを覚えた。
何かくせになりそう、この痛み。
「あーあ、ソフィって匠ねらいか、残念。ちょっといいかもって思ったんだけどなあ」
隣で森村がボソボソ言った。
「え、ああいう子好き? 法学部の博士課程であの雰囲気、ギャップあるけど、匠は好きな人いるみたいだし、思い切って話しかけてみたらいいんじゃないか?」
「え、ほんと? 匠、付き合ってる人いたっけ?」
「いや、付き合ってはいないみたいだが」
未だに匠の片思いのようだが。
「直ちゃん。お友達?」
良太と森村が直子に歩み寄ると、傍らに三人の女性がいた。
「うん。青山プロダクションの良太ちゃんと、モリー。えっと、ジャストエージェンシーの美紀ちゃん、一般事務やってる高野ちゃんと中井ちゃん」
直子に簡単に紹介されて良太と森村が名刺を出すと、美紀はスッと自分の名刺と交換したが、高野と中井は不慣れなようすで名刺を交換する。
いろんな相手と名刺交換する中には、たまに自作の名刺もあったりするが、高野と中井の名刺もパソコンでプリントアウトしたらしいもので、あまり聞いたことがない会社名だった。
高野美恵子と中井裕子とあるが、中井は黒髪のボブヘアにごつい眼鏡、地味目なベージュのスーツに低いヒール。
プロポーションは良さそうで背も高そうだが、俯き加減に話す。
高野も黒のお通夜のようなスーツに黒のパンプス、こちらも眼鏡に長い黒髪で顔を隠すように立っている。
わざわざ交流会に来るのなら、合コンじゃなくてもソフィ程ではなくてもお洒落してくるんじゃないかな、となんだか場違いのような二人を見て、彼女たちから離れる時、良太は小首を傾げずにはいられなかった。
だが、彼女たちから少し離れたところまで来て、「直ちゃん、ユキの傍にいる赤毛誰よ?」という声が背後から良太の耳に入った。
二人の女性に対して何かしらあった違和感が、その台詞で氷解しそうに良太は感じた。
待て待て待て待て待て。
思わず振り返りそうになるのを必死で抑えながら、良太は頭の中でいろんなデータを組み合わせてようやく一つの核心に辿り着いた。
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