霞に月の75

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「ああ、工藤の同級生とかって言ってたな。T大の香坂准教授」
「そうだ、インテリ軍団の」
「そういえば、モリー、彼女とどうなんだよ」
 良太は香坂と工藤のことをあれこれ森村が詮索する前に話題をずらした。
「ソフィ? あれから一回会った。休みがなかなか合わないからな。でも、次の日曜、俺、休み貰えるんですよね? ディズニーランド行こうって言ってて」
 森村が嬉しそうに笑う。
「なるほど、お前らも上手く行ってるわけだ」
「え?」
ボソリと良太が呟いたその時、「良太ちゃん」と宇都宮が呼んだ。
「あ、はい」
 良太は手招きする宇都宮の方へと歩み寄る。
「どうかしました?」
「いや……」
 何となく言葉を濁した宇都宮は少しかがむと、良太の耳元で、「あの人、工藤さんに何の用できたの?」と囁いた。
「え、いや、何だろう、ちょっとわからないです」
 聞かれて良太は戸惑いを隠せない。
 ホントにやっぱり、あの二人付き合い始めたんだ。
 まだまともに二人を見ることはできない。
 良太は二人を意図的に視界から外していた。
「あのさ……」
「良太ちゃん、ちょっといい?」
 宇都宮が何か言いかけた時、照明の田崎が良太を呼んだので、「すみません」と断って良太は足早に田崎のところへと向かう。
 宇都宮は良太のようすがやはりおかしいとその後姿を追った。
「小笠原くん」
 小笠原が近くに座っているのを見て、宇都宮は呼んだ。
「なんすか? さっきなんかおかしかったっすか?」
 ひょいと立ち上がり、コーヒーカップを持ったまま小笠原はやってきた。
「ああ、いや、全然よかったよ。それより、良太ちゃん、お疲れみたいだよね」
「うん、あいつ、ワーカホリックなとこまで工藤のマネっこしなくてもいいのに。工藤が映画のキャンペーンとかで走り回ってるから、良太にしわ寄せが来てんだよな」
「そうか」
 こいつは人の感情の機微には疎いな。
 宇都宮は一人納得して、椅子に引っ掛けておいたジャケットから携帯を取り出した。
「ひとみちゃん? ちょっと聞きたいことがあって。今いい?」
 田崎が持ち場に戻ると、さっき宇都宮が何か言いかけたのを思い出して良太は宇都宮を探したが、宇都宮は電話中だった。
「あ、良太さん、すみません」
 今度は森村が良太に駆け寄ってきた。
「聞こうと思ってたんだ、これ、設定とかやり方わかります?」
 森村はポケットから携帯を取り出した。
「携帯変えたんだ?」
「ってか、こないだ父と会った時、俺の携帯見て古いからって、買ってくれたんですよ。でも設定とか日本語で、もうわけわかんなくて」
「ショップでやってもらわなかったんだ?」
 すると情けなさそうに森村は笑い、「波多野、思い立って近くの店で買って、ほいって渡しただけで行っちゃって」と言う。
「ああ、あの人って、そういう感じだよな」
 良太は完ぺき主義的な雰囲気の無表情な波多野の顔を思い浮かべた。
 


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