何でこうなるんだよ。
とは、良太の心の中の呟きだ。
ゴールデンウイーク明けに、オフィスで千雪とまったり愚痴り合いをしていた時に何となく感じたイヤーな予感。
あれからちょこちょこと『田園』の撮影の時にはいろいろあった。
デビューが十三歳で二十二歳と言っても既に芸歴十年目の竹野にしてみれば、本谷などは駆け出しもいいとこだろう。
主演の宇都宮が在籍する病院に勤務する医学部の後輩という役どころだから、本谷が竹野に絡むことはないと良太は思っていたのだが。
いつの間にか、高校を卒業し大学進学で上京した竹野が、勤務する病院に宇都宮を訪ねていくという設定の際、宇都宮を探して病院内をうろつく竹野を見とがめて注意する本谷というシーンが入っていた。
ここで竹野が本谷の台詞回しをこき下ろして、数回リテイクということになってしまったのだ。
本谷は懸命に科白を口にするのだが、そのたびごとに、竹野が、「何それ」とか「ちょっとそんな大きな声出されちゃ、あたしまで激高しなくちゃならなくなるでしょ」などと言ってくれるので、撮り直しは必須だ。
「幼稚園のお遊戯会じゃないんだから、しっかりやってくんない?」
挙句は工藤も真っ青なダメ出しをして下さる。
本谷がリテイクするごとに余計に硬くなってしまっていることに気づいた良太は、ディレクターのカットがかかってすぐ、「何か、皆さんお疲れのようですし、中川から美味しい肉まんの差し入れがあるんです。少し休憩取られてはいかがですか」と口を挟んだ。
「ああ、賛成! おなかすいちゃって」
一番に手を挙げたのは、宇都宮の妻役で傍らで撮影を見ていた山内ひとみだった。
「よーし、二十分ほど休憩にしよう」
ディレクターも何やらほっとしている感じである。
ディレクターの溝田は坂口とは顔なじみで、大抵は温厚だが、締めるところは締めるという骨太の性格だが、ちょっと竹野には手を焼いているようだった。
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