風そよぐ11

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 竹野の指摘は間違ってはいない。
 だが、大物であろうと誰であろうとその物言いがきつすぎるので、一緒にやっている俳優たちは気を遣って緊張するか、下手をすると言い争いにもなりかねないのだ。
「さすが、良太ちゃん、グッドタイミング!」
 ひとみが肉まんを手に、良太の肩を叩いて、こそっと耳打ちした。
「本谷がまだまだだってのはわかってても、あの言い草はないよね。竹野とかにもろに言われたら本人気落ちしちゃうだけじゃない」
 ちょっとひとみはイラついているようすだ。
「いや、何か本谷さん見てると、俺、身につまされちゃって。ちょっとほら、アスカさんと代役でドラマとか出た時、もう何度もリテイクで、周りの俳優さんたち怒り心頭だったから」
「あら、みんなそうやって大きくなっていくのよ。本谷なんか、前のドラマで工藤にクソミソに言われてから、結構奮起したじゃない。セリフはまだしも、演技や表情に重みが出てきたし。あの子、そのうち化けるわよ」
 二人がこそこそそんな話をしているところへ、宇都宮がやってきた。
「何こそついてるんだ? 俺も仲間してよ」
「最近、付き合い悪いのはトシちゃんじゃない」
 ニヤニヤと笑う宇都宮に、ひとみが言い返す。
「いやあ、舞台もつい数日前まであったしね。これからはじゃんじゃんいきますよ、と言いたいとこだけど、最近疲れっぽくて、やっぱ年かな」
「やめてよ。世紀のイケメンの科白じゃないわ」
 二人は年も近く、今まで何度かドラマや映画で共演しているらしく会話も親しげだ。
「あ、そうだ、良太ちゃん、暑くなる前に、鍋の約束してたよね」
「ええ、してましたっけ?」
 宇都宮に急に話を振られたが、良太はすっとぼける。

 


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