一方病院では工藤が、亜弓は明日の授業があるので病院には寄らずに帰るが、その前にオフィスで食事をしてもらうという連絡を秋山から受けていた。
「お前の怪我が大したことがないとわかったから帰るそうだ」
工藤は亜弓が会いに来ないことを良太に告げた。
「すみません、亜弓のやつ、何だってまたわざわざ」
ベッドに起き上ってコーヒーを飲んでいた良太は、さほど残念にも思わず、眉を寄せた。
「ネットで今朝の事故の情報が飛び交ったからな、心配して飛んできたんだろう」
工藤も、何か食べてください、と良太に言われて買ってきたサンドイッチを齧っているところだった。
「うう、どうしよう、また、デマとかもごっちゃになって、おかしなネタにされてるんだ」
「フン、ほうっとけ」
事も無げに工藤は言い放つ。
昨夜真夜中に京都からタクシーを走らせて撮影現場に辿り着いたはいいが、何とか撮影が終わったと思いきや、良太の事故で生きた心地がしなかった工藤は、脳震盪に打撲という良太の検査結果を聞いてまさしく脱力した。
緊張を解いたせいかどっと疲れが押し寄せ、良太が寝ている横で、今日は工藤もうつらうつらして過ごした。
そんな、やたらくたびれた雰囲気にもかかわらず、電話をするために病室を出た工藤のことを、前髪が幾筋か額に落ちているのがたまらない渋イケメンだなどと、きゃぴった女性看護師が良太に、素敵な方ねぇ、などとため息交じりに呟いていったと思えば、別の看護師がうきうきと、プロデューサーですって? などと良太に耳打ちして確認する。
良太は、ハハハ、と笑ってごまかすしかなかった。
病院でまで秋波送られてんじゃねーよ!
と心の中では喚きつつ。
とはいえ、こうしてほぼ一日病院に付き添ってくれて、ベッドの横で工藤がもそもそとサンドイッチなんかを食べていることなんかが、妙に良太はうれしかった。
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