風そよぐ177

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「あのお、鈴木さん」
 良太は今日もエクセルに数字を打ち込んでいる鈴木さんに、声をかけた。
「なんでしょう?」
 振り返った鈴木さんに、良太は言葉を選びながら尋ねた。
「夕べ、亜弓、その、どんな、感じでした?」
 鈴木さんはちょっと小首を傾げた。
「そうね、最初は、何であなたがケガをしたのかって、少し怒ってる感じだったわ。撮影体制に問題があったんじゃないかというような。あなたが心配でそんな風に思ったんでしょう。お兄さん思いの亜弓さんだから」
「あいつ、思い立つと誰彼かまわず突っ込むやつだから」
 はあ、と良太は一つ溜息をつく。
「そうね」
 鈴木さんはフフフと笑う。
「沢村さんがいらしてから、何だか亜弓さんと二人で仲良く言い争いをしてたわよ」
「はあ? あああ、そう、そうなんっすよね、ガキの頃俺の試合亜弓もよく見にきてて、沢村と俺が喧嘩する傍で、あいつらしょっちゅういがみ合いで。犬猿ってよりハブとマングースみたいな」
 ったく、大人になってまで二人とも何をガキみたいなことやってんだ。
 しかも沢村も佐々木さんの前で、バカじゃないのか。
 沢村を心の中でこき下ろしてから、良太はパソコンを立ち上げ、画面をしばし見つめていたが、一応、亜弓にラインで礼を言っておいた。
 しばらくして亜弓から返信が来た。
『重症じゃなくてよかったね。撮影で事故っていうのをネットで見て、お兄ちゃんだってわかってとんでっちゃったんだけど仕事の準備があったから寄らないで帰ってきたの。お父さんたちには言ってないよ、心配させるだけだし』
 ありがとう、と返すとすぐまた返信が来た。
『それより、宇都宮さんに、今度、またお茶でもって誘われちゃったよ!』
 それを見て、良太は、うわあ、と声をあげそうになった。

 


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