中川アスカといえば、しとやかな女性とかでもなく、知性溢れるという印象でもないが、男性に頼らなければ生きられないような女性やいじめられて耐え忍ぶような女性とかには決して該当しないので、そんな役のオファーはあったためしもない。
以前は女王様的な、弱弱しい女性をむしろいじめる側の役ならオファーが来たこともあるのだが。
勝気でできる女性か負けず嫌いでやってしまう的な役が最近のアスカへのオファーだ。
これからは演じる役に幅をもたせたいと、秋山の提案で舞台にも挑戦したりしている。
実力はそれなりに、着々と女優としてのアスカを成長させているのだが。
「なーにが、やってみたら案外いけるかも、よ」
今回アスカはコメディドラマに、ヒロインとして出演しているのだが、朝から撮影のため、砧にあるスタジオにいた。
休憩に入ってから、足や腕を組んだまま、アスカは隣に立つ良太に文句を言っていた。
「何ですか? それ」
「夕べ、竹野と意気投合しちゃって、ペチャクチャ喋ってたじゃない」
アスカの声の高音が、良太の頭を直撃する。
昨日、思い切り疲れてそれでも工藤から迎えの指示があったため、『田園』の撮影が行われているスタジオを覗いたところへ、坂口の命により、工藤ともども坂口行きつけのバーに俳優陣と一緒に繰り出す羽目になり、たまたま竹野の隣に座ったことは覚えている。
何か、竹野がまた酒の席で本谷を罵倒し始めたにもかかわらず、竹野を誰もとめようとしないのをみかねて、つい、口を挟んでしまった、くらいなことまでは覚えている。
それから竹野と意気投合して飲んだとか、どうやって部屋に帰ったかとか、そういったことは全く覚えていないのだ。
久々、意識を飛ばすまでの悪い酒となったらしい。
かろうじて、今朝、アスカの撮影に同行するというスケジュールは携帯にインプット済みで、朝、けたたましい音とともに良太は飛び起きたのだ。
起きたはいいが、頭はガンガンする、身体は重たい、最悪のコンディションで、頭痛薬を飲んでシャワーを浴びてやっとの思いでスタジオに着いたのだ。
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