風そよぐ216

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「実は前に、撮影中、祖父が倒れたってうちから連絡が来て、うろたえてたら、工藤さん途中だからって東京駅まで車で送ってくださって」
「え…………」
 良太はまじまじと本谷を見つめた。
「そのまま俺、桐生まで行ってきたんですけど、俺、郷里桐生なんです。つい二日ほど前、お陰様でじいちゃん退院したって連絡きて。ちょっと心臓が弱ってたんで心配したんですけどね」
「そうだったんですか。よかったですね、退院されて」
 そう、だったんだ、あの時、だよな?
 なんだ………。
 そっか。
「わかりました。伝えておきます」
 ちぇ、滅多に善行なんかしないやつが、親切に人乗せたりするから、変な邪推するんだろうが。
 ああ、何か、工藤に悪いことした気がする。
 ちょっとだけな。

  

 七月に入ると俄然万年人手不足の青山プロダクションの面々はまた皆忙しくなった。
 何ごとも順調に進んでいたかのようにみえた。

 


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