端田も七十代バリバリの現役で、難しい顔で警察官などの役が多いが、素はよく笑うユーモア溢れるベテランだ。
太い声で力強い科白が入ると、場が引き締まる。
「どうだった? 工藤さん」
いつの間にか後ろに来ていた秋山が聞いた。
「あ、相変わらずでしたよ」
秋山はどうやら宇都宮との事情を知っていて工藤に話したのだろうと思うのだが、そういえばアスカかひとみあたりから聞いたのだろうか。
ちょっと首を傾げるところもあるのだが、この人はあまり敵に回したくない御仁だ。
「あ、広瀬さん、お疲れ様です。京都はどうでしたか?」
その時、本谷がやってきてにっこり笑った。
「暑かった。あ、でも高雄とかは涼しくて、何か別世界でしたよ」
「俺、学生の時に京都いろいろまわったけど、高雄って、行ったことないんですよね」
「俺も撮影で初めて行った。あれ、今日はまた一人?」
「あ、ええ、まあ。でも、浜野さんとは連絡を密に取るようにしてます。行き帰りも今のところタクシー使ってますし」
どうやらマネージャーは先日のお詫び行脚に顔を見せただけのようだ。
まあ、本谷さえ、何の問題もなく仕事をしてもらえればそれでいいのだが。
「工藤さん、当分向こうなんですよね」
本谷の口から工藤の名前を聞くとやはり良太の心はざわめいてしまう。
「そうだね」
「あの、工藤さんに、伝えていただきたいことがあるんですが」
えっ、と良太は本谷を見つめた。
今度はなんだ? と思わず構える。
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